2016-01-01から1年間の記事一覧

都市の起源(その四十二)・ネアンデルタール人論193

その四十二・言霊信仰という嘘 1 日本列島の古代人は、「大和はことだまの咲きはふ国」といった。 「ことだま」というと、多くの古代文学研究者が「言葉の霊魂」というような意味に扱っているのだが、そういう解釈になっていったのはおそらく「御霊信仰」が…

都市の起源(その四十一)・ネアンデルタール人論192

その四十一・都市のエスプリ(機知) 1 ネアンデルタール人以来の伝統を引き継いだヨーロッパの原始的な都市集落は、誰もが「支配されるもの」になりながら「連携」してゆく、という生態の上に成り立っていた。それがヨーロッパ的な都市生活の作法の伝統で…

都市の起源(その四十)・ネアンデルタール人論191

その四十・アフリカ・アラブ・ヨーロッパ 1 人類史における「支配者=王」はいつごろどのようにして生まれてきたのか?それは、人の心の支配欲はどのようにして膨らんでくるのだろう、という現代社会で暮らすわれわれの問題でもある。支配欲を旺盛にしなが…

都市の起源(その三十九)・ネアンデルタール人論190

その三十九・「支配されるもの」になる、という文化 1 人間社会における支配と被支配の関係は、どのようにして生まれてきたのだろうか? これは、大問題だろう。 猿の群れにはボスという支配者がいて、その他のすべての個体どうしのあいだにも順位制という…

都市の起源(その三十八)・ネアンデルタール人論189

その三十八・愚かであるということ、この生は幸せかどうかという損得勘定だけではすまない 1 根源的にはというか人間性の自然においては、人は、「生き延びる」という目的で生きているのではない。この世界の輝きにときめきながら「生きてしまっている」だ…

都市の起源(その三十七)・ネアンデルタール人論188

その三十七・もう生きられない 1 なんかもう、何もかもいやになった……そんな気分で会社を辞めてゆく若者はたくさんいるのだろう。何ごとにおいても、「いやになる」とは「もう生きられない」ということだ。この世の中を生きていれば、「いやになる」という…

都市の起源(その三十六)・ネアンデルタール人論187

その三十六・連携の文化 1 人類の歴史は、「避けがたく支配されてしまう無防備な心」つまり「支配しない心」が成熟してきて「都市」という無際限に膨らんだ集団を生み出した。誰もがそういう心を持っていなければ、そんな鬱陶しい集団の中で暮らすことはで…

都市の起源(その三十五)・ネアンデルタール人論186

その三十五・支配されてしまう 1 支配と被支配。 どうしてこんな関係が生まれるのだろう。 支配されるなんて、鬱陶しくて苦しいばかりなのに、どうして受け入れてしまうのだろう。 人類最初の国家は「王」という存在が登場してきたことによって生まれたとい…

都市の起源(その三十四)・ネアンデルタール人論185

その三十四・恥知らず! 閑話休題。 イギリスの国民投票による「EU離脱の決定」というニュースは、そりゃあ気になる。 この国の政治経済にどんな影響があるかということなどさしあたってどうでもいいが、「イギリスはこれからどうなってゆくのだろうか?」…

都市の起源(その三十三)・ネアンデルタール人論184

その三十三・「監視」という制度 1 都市生活の作法のひとつに「干渉しない」あるいは「監視しない」ということがあるはずだが、都市にだって、ときどきそういうことばかりしたがる人がいる。 「ストーカー」といっても、事件を起こす人だけじゃなく、一般的…

都市の起源(その三十二)・ネアンデルタール人論183

その三十二・生きられない弱いもの 1 氷河期の北ヨーロッパに住み着いていたネアンデルタール人は、「生きられなさ」を生きた人々だった。 人は、生きられなさを生きる存在なのだ。 人類は、生きられなさを生きる姿勢として二本の足で立ち上がり、生きられ…

都市の起源(その三十一)・ネアンデルタール人論182

その三十一・東京の復興 1 承前 秋葉原通り魔事件の加藤君は、東京に出てきて、自分は正しく優秀な人間であらねばならないという強迫観念がさらに強まり、その裏返しとしての挫折感や劣等感も頭の中でいっぱいになっていたらしい。 都市にはたくさんの人が…

都市の起源(その三十)・ネアンデルタール人論181

その三十・秋葉原事件の加藤君の場合 1 秋葉原通り魔事件は、都市の問題でもあった。まあ、都市の雑踏の中で起きた事件だったわけで、都市の雑踏とは何か、ということについて考えてみたい。 人と人の関係の基本というか自然は、一方通行の思いを向け合うこ…

都市の起源(その二十九)・ネアンデルタール人論180

その二十九・農業都市の起源 1 都市とは、たくさんの人が集まってきている場所のこと。そんな場所が住みやすいかといえば、基本的には住みにくいに決まっている。いろいろ鬱陶しいことや困ることがついてまわる。現在の都市は金さえあれば快適に暮らせる場…

都市の起源(その二十八)・ネアンデルタール人論179

その二十八・聖地巡礼 1 そろそろ都市の起源論を締めくくりたいのだが、迷走している。 最初に戻ろう。 起源としての都市は、どこからともなく人が集まってくることによって生まれてきたわけで、氷河期明けの1万年前ころ、そのことがもっともダイナミック…

都市の起源(その二十七)・ネアンデルタール人論178

その二十七・人間的な連携 1 知性とは「わかる」ことではない。「なんだろう?」と問うことだ。そうやって生まれたばかりの子供のようにこの世界の「不思議」に驚きときめいてゆくことだ。そういう「問い=ときめき」を生きているなら、無知な庶民だって「…

都市の起源(その二十六)・ネアンデルタール人論177

その二十六・心の中の神、という制度性 いくら自分の正しさを見せびらかしても、そのぶんだけ人から好きになってもらえるとはかぎらない。 人間なんて人に好かれてなんぼの存在だし、誰だって自分は魅力的な存在たりえているかということが気になっているの…

都市の起源(その二十五)・ネアンデルタール人論176

その二十五・都市生活の醍醐味 1 生き延びようとする欲望が人を生かしているのではない。 人間なんか、生き延びることができなくなるようなことばかりして生きている存在なのだ。 生き延びることができなくなるようなことをするのが人の生きるいとなみだ、…

都市の起源(その二十四)・ネアンデルタール人論175

その二十四・ここにはいられない 1 文化人類学者が人類発祥の地であるアフリカ中央部の未開の民族の生態を研究するのは、人間性の自然というか本質に迫りたいからだろう。 そこには、家族的小集団による移動生活があり、「部族」という幻想のネットワークが…

都市の起源(その二十三)・ネアンデルタール人論174

その二十三・アフリカで生まれたミーイズム 1 現在の人類集団は、規範によって「秩序」をつくってゆく「制度性」と、なりゆきまかせの「混沌」の中からときめき合い連携してゆく「祝祭性」の、相反する二つのベクトルの関係性の上に成り立っている、といえ…

都市の起源(その二十二)・ネアンデルタール人論173

その二十二・風景画と人物画 1 西洋の絵画史における「風景画」は、近代の印象派の登場ともに本格化してきた、といわれている。 それまでは、宗教画とか風俗画とか肖像画とか、もっぱら人の姿を描くことが中心で、風景はただの背景にすぎなかった。しかし印…

都市の起源(その二十一)・ネアンデルタール人論172

その二十一・風景の発見 1 「風景の発見」という言葉というか概念は、柄谷行人の『近代日本文学の起源』からの借用だが、べつにそこで教えられたことを書こうというのではない。それどころではない。ようするにこの人は「<風景の発見>は、近代的自我によ…

都市の起源(その二十)・ネアンデルタール人論171

その二十・この生の愚劣さを受け入れる 原始的な都市集落が都市国家へと変貌してゆく段階で「家族」とか「戦争」というものが生まれてきた……これは何も僕だけの勝手な思い込みではなく、マルクス・エンゲルスをはじめとする多くの先人がいっていることだ。「…

都市の起源(その十九)・ネアンデルタール人論170

その十九・生き延びることは正義か? 1 現代人は生き延びるための「衣食住=生活=日常」に耽溺して生きようとしがちだが、人類が衣食住のことを進化発展させてきたのはそこに「非日常性」を盛り込もうとしてきたからであって、「生活=日常」に耽溺するた…

都市の起源(その十八)・ネアンデルタール人論169

その十八・サバイバル 1 古代ローマも最初はギリシャのような多神教だったが、ローマ帝国の衰退期になってから、一神教であるキリスト教を国教にしていった。そのころはすでにほとんどの民衆がキリスト教徒になっていたし、共同体の「規範=法」はキリスト…

都市の起源(その十七)・ネアンデルタール人論168

その十七・一神教と多神教 1 古事記は民衆の世界観や生命観から生まれてきた歴史物語(伝承説話)を採録したものであり、それを権力者の都合がいいように脚色していったのが日本書紀だといわれている。 古事記であれ日本書記であれ、そこにどんな史実が隠さ…

都市の起源(その十六)・ネアンデルタール人論167

その十六・「神」の起源 1 人類史における「神」という概念は、氷河期明けの、祭り賑わいを基礎にしたプリミティブな都市集落が都市国家という共同体へと発展してゆく過程で生まれてきたのではないだろうか。。 原始人は、「神」なんか知らなかった。 現在…

都市の起源(その十五)・ネアンデルタール人論166

その十五・都市生活の流儀 1 人は、人と人が他愛なくときめき合う「祭りの賑わい」がなければ生きられない。もちろんわれわれは衣食住によってこの命をつないで生きているわけだが、人間性の基礎=自然は「人と人の関係」すなわち「人が人を想う」ことにあ…

都市の起源(その十四)・ネアンデルタール人論165

その十四・人の心は揺れ動く 1 人類史の都市の起源は、ある場所で「祭りの賑わい」が豊かに生成していったことにあるのであって、生き延びるための衣食住を求めてそうした大集団を計画構想していったのではない。「祭りの賑わい」に引き寄せられて、どこか…

都市の起源(その十三)・ネアンデルタール人論164

その十三・もう死んでもいい 1 人類史の「都市」は「祭りの賑わい」から生まれてきた。集団の中の日常生活の鬱陶しさから解き放たれる「非日常の賑わい」の中で「都市という集団」になっていった。 イタリアには「ナポリを見て死ね」などという諺があるらし…