2009-11-01から1ヶ月間の記事一覧

祝福論(やまとことばの語源)・若者ことばの受難

近頃のギャルたちが選んだ今年いちばんの流行語は、「あげ・さげ」なのだとか。 「最高・最低」という意味です。 たとえば、「昨日のコンサート、超<あげ>だったわね」というように使うらしい。 これは、興味深い現象です。 「最高・最低」に対する「あげ…

祝福論(やまとことばの語源)・「泣く女」

ピカソの絵に、「泣く女」というのがある。 ごていねいに、涙の粒まで描いてある。 泣いている女の心というのは、男にとってはひとつの神秘である。 女に泣かれることなんかうんざりだが、なぜうんざりするかといえば、その心の動きがよくわからないからだ。…

祝福論(やまとことばの語源)・「例外」であること

現代人は、「例外」になりたがる。自分だけは違う、という優越感にひたりたい。誰もが、どこかしらにそんな心を抱えている。幸せとは、不幸の「例外」のことである。不幸に対する例外感(ということばがあるのかどうか知らないが)、すなわちそういう優越感…

祝福論(やまとことばの語源)・伊勢

伊勢に、母親の墓参りに行ってきました。 母親が死んで八年、今はもう伊勢の家もないし、べつに行きたいわけでも行かなければという義務感もなかったのだけれど、娘にどうしてもといつも言われていたので、まあその場所を教えておくためにとりあえず連れてい…

祝福論(やまとことばの語源)・女の嘆き

普遍的な女の嘆きは、どこにあるのだろう。 おそらく、うっとうしい体を抱えて生きている、ということにあるのではないか、と思える。 彼女らは、体のことなんか忘れてしまいたい、と願っている。だから、忘れてしまう心の動きを自然に身に付け、忘れてしま…

祝福論(やまとことばの語源)・「男と女の世の中」

男がいて、女がいる。 男と女に分けることによって、とりあえずこの世界が成り立っている。 この世の中は、「男と女が結婚し子を産み育てる」ということを基礎にして成り立っているらしい。 男と女を分けることが「秩序」になって、この世界がうまく運営され…

祝福論(やまとことばの語源)・やまとことばと女性論

前回、松尾多勢子という幕末の討幕運動家のことを書きました。 それは、信濃や伊那の風土性というか土地柄のことを考えてみたかったからだが、彼女のことを詳しく調べれば、女性論として何かおもしろいことが書けるかもしれない、という気もします。 150…

祝福論(やまとことばの語源)・「山(やま)」と「岳(たけ)」2

「山(やま)」と「岳(たけ)」の違いは、ただ高いか低いか大きいか小さいかというような違いではない。 その山を眺めるとき、そのやさしい姿をした「山」に抱かれてあるような親しみと充足をおぼえるのか、それとも、遠く立ちはだかる「岳」に対して畏敬の…

祝福論(やまとことばの語源)・「山(やま)」と「岳(たけ)」

「ヤマトコトバの考古学(木村紀子著・平凡社)」という本があります。今年の夏に出たばかりで、二千八百円という少々高価な本だが、興味深いことがたくさん書かれてある。 この本の前書きで、著者はこういっています。 「文献以前、あるいは文献によって蔽…

祝福論(やまとことばの語源)・「棺(ひつぎ)」2

(承前) 日本列島の古代人にとっての「死」は、きれいに何もかもなくなって終わりになる、ということだった。仏教が入ってくるまでは、あの世に極楽浄土があるなどと思っていなかった。わけのわからない闇だらけの「黄泉の国」が広がっているだけだ、と思っ…

祝福論(やまとことばの語源)・「棺(ひつぎ)」1

「ひつぎ」とは、死者を安置する棺おけのこと。おそらく、古墳時代からそのようなことばはあったに違いない。 いや、弥生時代にはもう、「棺」をつくって死者を埋葬していたはずだ。そのときに「ひつぎ」といっていたかどうかはわからない。しかし、「ひつぎ…

前回の続きをちょっと

前回の記事に対して、こんな反応がありました。そのひとがいうには、僕は科学や学問のことを「ろくなもんじゃない」と思っているのだそうです。そしてそれはひとまず健全な反応であるが、ただし科学や学問が「ろくなもんじゃない」と証明するためにはそのた…

閑話休題

レヴィ=ストロースが死んだ。 あるブログで、そのことへの追悼というようなかたちで「真正性の水準」という概念に関することが書かれていた。 「真正性の水準」とは、「個々人が安定した社会的関係を維持できる集団の、個体数における理論上の認知的限界」…

祝福論(やまとことばの語源)・泣く

人間は、その存在の根源において「嘆き」を抱えている。 悲しんだり嘆いたりすることなんかつらいだけだからやめておけばいいのに、それでも人は、そういう世界に避けがたく入り込んでしまう。 人間は不自然な生きものである。正真正銘の自然は、人間の外に…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」53

「神話の起源」というテーマで書き始めたきっかけは、村上春樹氏の「1Q84」という小説が爆発的に売れている社会現象に対してわれわれはどう反応すればいいか、と考えたことでした。 誰かが、村上作品は「物語=神話」の構造の上に成り立っている、そこが…