2007-11-01から1ヶ月間の記事一覧

アンチ「私家版・ユダヤ文化論」・9

「私家版・ユダヤ文化論」の締めくくりとして、最後にちょっと難解な書き方をしている部分があります。たぶん、著者である内田樹氏のいちばん言いたかったことなのだろうから、そこのところをちょいとつついてみます。 ・・・・・・ ユダヤ人は「すでに名指され」…

アンチ「私家版・ユダヤ文化論」・8

現代のイスラエルの「キブツ(共同農場)」では、子供を、それそれの家ではなく集団でまとめて育てているところもあるのだとか。これは、ネアンデルタールの伝統です。家族意識が希薄で、その代わりに集団の結束力が強いから、こういう習俗が生まれてくる。…

アンチ「私家版・ユダヤ文化論」・7

歴史的に言えば、ユダヤ人は、内田氏のいうように、始原において「遅れてきた民族」であるのかどうかはわからない。 ユダヤ人の歴史的な起源を語るとき、いちおう常識的には、彼らはもともと遊牧民族で、遅れて共同体にやってくることを宿命づけられた存在な…

アンチ「私家版・ユダヤ文化論」・6

人類の歴史として、反ユダヤ主義を考えてみます よそ者として共同体に入り込んできたユダヤ人は、隣人の存在にときめいたり煩わされたりはしない。彼らは、世界中に散らばっているユダヤ人どうしのネットワークで活動している。 地域ごとが都市国家としてた…

アンチ「私家版・ユダヤ文化論」・5

反ユダヤ主義者だって、人と仲良くして生きていきたいからこそ、仲良くできそうもないユダヤ人が邪魔だという。差別したり迫害したり戦争をしたりする行為も、元をただせば、そういう他者との関係をスムーズにしたいという本性的な衝動から生まれてきている…

アンチ「私家版・ユダヤ文化論」・4

E・レヴィナス先生が、深い知性とともに比類なき高潔さをそなえた哲学者であるのはたしかにそうなのでしょうが、ただその書きざまが妙にナルシスティックで、いまいちついてゆけないものを感じていました。 そのわけを、内田樹氏の「私家版・ユダヤ文化論」…

アンチ「私家版・ユダヤ文化論」・3

僕は、以前から、自分はユダヤ人的な人間だろうと思って生きてきた。 小学校のときは転校することが多く、そのたびに自分は「よそ者」だという自覚を確認していた。そしてその後も、今にいたるまで、自分が参加するどんな集団にたいしても、自分はよそ者であ…

アンチ「私家版・ユダヤ文化論」・2

内田樹氏の「私家版・ユダヤ文化論」は、次のように最終章を締めくくっています。 ・・・・・・ 「わたしたちがユダヤ人について語る言葉から学ぶのは、語り手がどこで絶句し、どこで理路が破綻し、どこで彼がユダヤ人についてそれ以上語るのを断念するか、ほとん…

アンチ「私家版・ユダヤ文化論」・1

内田樹氏の「私家版・ユダヤ文化論」を読んだので、自分も、ユダヤ人について考えてみることにしました。 僕は大雑把な人間だから、大雑把な言い方をしかできない。「ユダヤ人」について何を知っているわけでもないし、研究者のような「調べる」ということの…

人類史における共同体(国家)の発生

太平洋戦争のときの軍隊において、勇敢に戦ったのは東北出身の人たちの部隊で、それに比べて関西出身の人たちはからきし根性がなかった、といわれています。 寒い地方の人たちは、寄り集まって祝福し合おうとする心性が濃密です。だったら勇敢に戦うはずがな…

人類の歴史と知能の発達

人間のように「個人」あるいは「自己」という意識の強い生きものが、寄り集まって大きな群れを形成してゆくには、それなりに高度な知能を必要とする。ネアンデルタールの脳容量が現代人よりも大きいほどになっていったのは、それなりに無理をして大きな群れ…

人類拡散の逆説

5万年前の北ヨーロッパで、大きな群れの中に寄り集まりながら寒さに耐えて暮らしていたネアンデルタールは、大量の脂肪分を摂取するために、チームワークによるマンモスなどの大型草食獣の狩をしていた。彼らは、そのさいによく骨折をしたりしていたという…

「村上春樹にご用心」だってさ・2

読者が、村上春樹の小説からイメージする世の中に対する役に立ち方は、とてもおしゃれであるらしい。 それを、内田樹氏は、「村上春樹にご用心」という本の中で、次のように解説してくれる。 ・・・・・・ 私たちの世界にはときどき「猫の手を万力で潰すような邪悪…

「村上春樹にご用心」だってさ・1

最近、内田樹氏のそういう村上春樹論の本が出て、それを高く評価していた友人がいたので、僕も買って読んでみました。 僕も、村上春樹の小説は、大好きです。川端康成と村上春樹の本なら、いつどんなときでも時間を忘れて読んでしまうことができる。そういう…

人間性の歴史・1

数百万年前の直立二足歩行の開始から、現代まで・・・・・・人類の歴史をトータルに考えてみたい、とこのごろ思っています。 いまどきの古人類学や考古学の研究者たちは、そういう視点に立った人間観というか哲学が貧困なまま、「歴史おたく」よろしく、ちまちまと…

歴史と人間の本性

司馬遼太郎氏は、僕のもっとも信頼できる歴史家の一人ですが、その対談集を読んでいて、ちょっと違うのではないかと思う個所がありました。 ・・・・・・ 「考えてみますと、日本の歴史というのはある意味で縄文式のころから、餓えるかもしれないという恐怖心の歴…