2009-01-01から1年間の記事一覧

閑話休題・「チームワーク」について2

現代社会は、「自立」や「自己統治」などということばがスローガンになってしまっている。 大人たちは、それによって心の秩序や社会の秩序を得ることが「チームワーク」であり、すべての問題を解決することだと思っている。 しかしサッカー選手は、そういう…

閑話休題・「チームワーク」について1

ワールドカップも近づいていることだし、サッカーの話をしたいのだけれど、たぶん逸れていってしまうと思う。 前回のドイツ大会で、サッカー通をもっとも驚かせたのは、アフリカのガーナチームだったのだとか。 その天性の身体能力に加え、アフリカにも組織…

祝福論(やまとことばの語源)・「原」を「ばる・はる」と読む地名

新田原(にゅうたばる)、西都原(さいとばる)、春日原(かすがばる)白木原(しらきばる)、このように「原」を「ばる・はる」と読ませる地名は、九州独特のものらしい。 その地名は、九州全体に広がっていて、福岡には27もある。 なぜ九州だけにしかな…

閑話休題・「表現の自由」について

ある人が、「表現の自由」について、次のように語っていました。 表現の自由とは、誰もが「自己実現」と「自己統治」のたしなみを持っていることの上に成り立っている。それが「自由な社会」であり、表現の自由にはそういう「ヒモ」がついているということを…

祝福論(やまとことばの語源)・「あはれ」と「はかなし」4

源氏物語をはじめとする平安時代の王朝文学では、「あわれではかない」というような言い方をよくする。 どちらかひとつでよさそうなものだが、「あはれ」と「はかなし」では少しニュアンスが違う。 「あはれ」とは「もの」の存在感があいまいで薄いことであ…

祝福論(やまとことばの語源)・「あはれ」と「はかなし」3

われわれの観念は、「ある」を「ない」と思うことはできない。曇り空を見上げて「晴れている」と思うことができないように、「ある」は「ある」なのだ。 「なにもない」から「ない」と感じるのだ。 みずからの身体を「ある=存在」として扱いながら生きてき…

閑話休題・レイプ、という問題

作家の曽野綾子氏が「レイプをされたくないのならミニスカートをはくな」というような発言をして、世の多くの女性の物議をかもしているらしい。 それじゃあまるで、レイプされるほうが悪い、と言わんばかりではないか、と抗議する人たちがいて、それはまあそ…

祝福論(やまとことばの語源)・「あはれ」と「はかなし」2

「はかなし」とは、一般的にいわれているような、「はか・なし」すなわち「はか=区画」(という確かなもの)がない、という意味ではない。 「はか」ということばそのものに、もともと「空っぽ」という「はかなし」のニュアンスがあったわけで、その「空っぽ…

祝福論(やまとことばの語源)・「あはれ」と「はかなし」1

唐木順三氏は、「無常」という著書の中で、<日本列島の住民のこの生に対する感慨の原型は「あはれ」と「はかなし」があり、それが中世以降の無常観として傾斜し定着していった>といっておられる。 「あはれ」と「はかなし」は、似ているようで、ちょっと違…

閑話休題・脳なんかたいしたものじゃない

ヤフーのページの広告に、「脳を鍛えて自己開発しよう」というようなメッセージが載っていた。 何いってるんだか。 脳なんか、二十歳を過ぎればどんどん衰えてゆくのだ。 脳の機能なんか、誰の脳も大して変わりはない。 優秀な脳とだめな脳があるのではない…

閑話休題・島根で起きたこと

先日起きた島根の女子大生殺人事件はほんとにひどくてむごいなあ、と思う。 そんなことをいっても、牛や豚などの生き物を平気で切り刻んで食っている人間がいえるせりふか、といわれると、そうじゃない、という理屈がなかなかうまく出てこない。 それはまあ…

祝福論(やまとことばの語源)・若者ことばの受難

近頃のギャルたちが選んだ今年いちばんの流行語は、「あげ・さげ」なのだとか。 「最高・最低」という意味です。 たとえば、「昨日のコンサート、超<あげ>だったわね」というように使うらしい。 これは、興味深い現象です。 「最高・最低」に対する「あげ…

祝福論(やまとことばの語源)・「泣く女」

ピカソの絵に、「泣く女」というのがある。 ごていねいに、涙の粒まで描いてある。 泣いている女の心というのは、男にとってはひとつの神秘である。 女に泣かれることなんかうんざりだが、なぜうんざりするかといえば、その心の動きがよくわからないからだ。…

祝福論(やまとことばの語源)・「例外」であること

現代人は、「例外」になりたがる。自分だけは違う、という優越感にひたりたい。誰もが、どこかしらにそんな心を抱えている。幸せとは、不幸の「例外」のことである。不幸に対する例外感(ということばがあるのかどうか知らないが)、すなわちそういう優越感…

祝福論(やまとことばの語源)・伊勢

伊勢に、母親の墓参りに行ってきました。 母親が死んで八年、今はもう伊勢の家もないし、べつに行きたいわけでも行かなければという義務感もなかったのだけれど、娘にどうしてもといつも言われていたので、まあその場所を教えておくためにとりあえず連れてい…

祝福論(やまとことばの語源)・女の嘆き

普遍的な女の嘆きは、どこにあるのだろう。 おそらく、うっとうしい体を抱えて生きている、ということにあるのではないか、と思える。 彼女らは、体のことなんか忘れてしまいたい、と願っている。だから、忘れてしまう心の動きを自然に身に付け、忘れてしま…

祝福論(やまとことばの語源)・「男と女の世の中」

男がいて、女がいる。 男と女に分けることによって、とりあえずこの世界が成り立っている。 この世の中は、「男と女が結婚し子を産み育てる」ということを基礎にして成り立っているらしい。 男と女を分けることが「秩序」になって、この世界がうまく運営され…

祝福論(やまとことばの語源)・やまとことばと女性論

前回、松尾多勢子という幕末の討幕運動家のことを書きました。 それは、信濃や伊那の風土性というか土地柄のことを考えてみたかったからだが、彼女のことを詳しく調べれば、女性論として何かおもしろいことが書けるかもしれない、という気もします。 150…

祝福論(やまとことばの語源)・「山(やま)」と「岳(たけ)」2

「山(やま)」と「岳(たけ)」の違いは、ただ高いか低いか大きいか小さいかというような違いではない。 その山を眺めるとき、そのやさしい姿をした「山」に抱かれてあるような親しみと充足をおぼえるのか、それとも、遠く立ちはだかる「岳」に対して畏敬の…

祝福論(やまとことばの語源)・「山(やま)」と「岳(たけ)」

「ヤマトコトバの考古学(木村紀子著・平凡社)」という本があります。今年の夏に出たばかりで、二千八百円という少々高価な本だが、興味深いことがたくさん書かれてある。 この本の前書きで、著者はこういっています。 「文献以前、あるいは文献によって蔽…

祝福論(やまとことばの語源)・「棺(ひつぎ)」2

(承前) 日本列島の古代人にとっての「死」は、きれいに何もかもなくなって終わりになる、ということだった。仏教が入ってくるまでは、あの世に極楽浄土があるなどと思っていなかった。わけのわからない闇だらけの「黄泉の国」が広がっているだけだ、と思っ…

祝福論(やまとことばの語源)・「棺(ひつぎ)」1

「ひつぎ」とは、死者を安置する棺おけのこと。おそらく、古墳時代からそのようなことばはあったに違いない。 いや、弥生時代にはもう、「棺」をつくって死者を埋葬していたはずだ。そのときに「ひつぎ」といっていたかどうかはわからない。しかし、「ひつぎ…

前回の続きをちょっと

前回の記事に対して、こんな反応がありました。そのひとがいうには、僕は科学や学問のことを「ろくなもんじゃない」と思っているのだそうです。そしてそれはひとまず健全な反応であるが、ただし科学や学問が「ろくなもんじゃない」と証明するためにはそのた…

閑話休題

レヴィ=ストロースが死んだ。 あるブログで、そのことへの追悼というようなかたちで「真正性の水準」という概念に関することが書かれていた。 「真正性の水準」とは、「個々人が安定した社会的関係を維持できる集団の、個体数における理論上の認知的限界」…

祝福論(やまとことばの語源)・泣く

人間は、その存在の根源において「嘆き」を抱えている。 悲しんだり嘆いたりすることなんかつらいだけだからやめておけばいいのに、それでも人は、そういう世界に避けがたく入り込んでしまう。 人間は不自然な生きものである。正真正銘の自然は、人間の外に…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」53

「神話の起源」というテーマで書き始めたきっかけは、村上春樹氏の「1Q84」という小説が爆発的に売れている社会現象に対してわれわれはどう反応すればいいか、と考えたことでした。 誰かが、村上作品は「物語=神話」の構造の上に成り立っている、そこが…

祝福論(やまとことばの起源)・「神話の起源」52

(承前) 安土桃山時代の茶室文化は、当時の武士たちによる戦国時代に命のやり取りをしていた高揚感や緊張感の余韻と、その機会に対する喪失感から生まれてきたひとつの代償行為である、と僕は思っている。 彼らは、茶室に入って、かつてのそうした高揚感や…

祝福論(やまとことばの起源)・閑話休題

戦国時代が終わって安土桃山時代に入ると、茶の湯が流行してきた。 それは、戦国時代の「死と背中合わせ」の生きざまを芸術として昇華してゆくムーブメントだったのだろうか。戦争がなくなって、そのとき武士たちの心に、かつてのそういう切羽詰った高揚感の…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源(オモロ)」51

沖縄には、「オモロ」という古い歌謡の文献が残されている。 沖縄の万葉集だ、ともいわれている。 たぶん、大和の人間が入り込んでくる中世よりずっと前の石器時代のような暮らしをしていたころから歌い継がれてきたものであり、それを16世紀ころに生まれ…

祝福論(やまとことばの語源)「神話の起源」50

六本木の東京国際映画祭で、ブルガリアの映画を見てきました。 「イースタン・プレイ(東方の祈り)」というタイトルで、人間や時代についてのいろんなことを考えさせてくれる映画でした。 そういう普遍的な問題を扱いながら、若い感性でとても誠実につくら…