2009-02-01から1ヶ月間の記事一覧

やまとことばという日本語・「うつしみ」

「うつしみ」は、気になることばです。 ここにも、「しみ」ということばがついている。 もともとは「うつそみ」といったのだ、という説がある。 「現臣」と書いて「うつそみ」と読む。「うつす(し)おみ=うつそみ」、つまり文書を書き写すお役人(=臣)のこと。万葉…

やまとことばという日本語・万葉集の「もの」

「もの」が、心に重くまとわりついいてくるような身体の「物性」から生まれてきたことばだとすれば、「こと」は、身体が何もない「空間」になってしまったようなすっきりとした感慨から生まれてきたことばです。 それが、「もの」と「こと」の語源にある感慨なのだ、…

やまとことばという日本語・「もの」

中国のある村で、葬式のBGMに日本のコミックソングが使われていた、という話があります。 日本人がただ何気なく口ずさんでいるだけの明るく軽快なメロディでも、彼らには「嘆き」のひびきを帯びているように聞こえてしまうらしい。 逆にいえば、日本人の「…

やまとことばという日本語・耳(みみ)

耳のことを、やまとことばでなぜ「みみ」というのか。 中西進氏の説明は、こうです。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 視覚、聴覚、触覚など、生き物の感覚機能はたくさ…

やまとことばという日本語・ことばの起源

女は、ものごとをかいつまんで話すのが下手だ。 その代わり、どうでもいいような細部のことでも、じつによくおぼえている。そういう能力が邪魔して、かいつまんで話せないのだろう。 言い換えれば、男の記憶など、かいつまんだかたちでしか残らない、という…

やまとことばという日本語・「なる」というカタルシス

百年に一度の不況というが、大半の人が今なお安楽に暮らし、一部の人たちだけが困窮している。 百万円の給料が80万円になったって、べつにいいだろう。半分になっても、生きていけないわけでもあるまい。 給料や貯金は増えてゆくものと決めてかかっている…

やまとことばという日本語・ことばが生まれてくる契機

「おれたち頭悪いから」とか、「人間関係へただから」とかいうような「嘆き」の中に、ことばが生まれてくる契機がひそんでいる。 舌先三寸で上手におべっかを使ったり、難癖をつけたり、たらしこんでしまったりできるのなら、ことばは「すでにある」のだから、こと…

やまとことばという日本語・「くはし」のエクリチュール

日本列島の「どうせ」ということばのニュアンスは、外国人にはきっとわかりにくいだろう。 それは、皮肉でも絶望でも怒りでもない。 この世界を希望のないかたちで受け入れつつ、その嘆きをカタルシスに変えてゆく心の動きからこぼれ出てくる言葉……とでもい…

やまとことばという日本語・「どうせ……」という美意識

ジム・ジャームッシュの「ナイト・オン・ザ・プラネット」は、大好きな映画のひとつです。 五つの短編を集めたオムニバス形式で、ある夜の、それぞれ別の場所で生まれたタクシーの運転手と客の会話、という構成です。アメリカ西海岸から始まって、ニューヨー…

やまとことばという日本語・「詳(くわ)しい」の語源

弥生時代までさかのぼることのできる日本列島の住民の美意識は、「細(くは)し」ということばにあるのだとか。 万葉集にも「くはし」ということばはあらわれる。 しかしそれが現代では「詳しい」という意味に使われるようになり、「くはし」という美意識は…

やまとことばという日本語・「艶(えん)なり」

内田樹氏は、若者に対するアドバイスや苦言がいろいろあるようだが、僕はそんなことができるような身分ではないし、そんな趣味も能力もありません。 ただ、「マスコミの寵児である知識人や社会的な権威を持った学者の言うことを鵜呑みにして何かがわかった気…

やまとことばという日本語・「冬ごもり」というまくらことば

「冬ごもり」は、「春」にかかるまくらことばです。 万葉集では、「冬ごもり 春さり来れば」などという表現が出てくる。 ここでいう「冬ごもり」は、べつに熊の冬ごもり(冬眠)のようなことを意味しているのではない。 「こもる」とは、「かくれる」という意味…

やまとことばという日本語・「あをによし」というまくらことば

「青(あお)」ということばの語源は、「仰(あお)ぐ」という動詞だった、たぶん。 青い空を仰(あお)ぐ。 [あお」とは、空を仰ぐこと。 「あ」は、「あ」と何かに気づく感慨からこぼれ出る音声。 「お」は、「おーい」と呼ぶように、「はるかに遠い」という感…

やまとことばという日本語・「しなもの」

「しなもの」とは、「とくべつなもの」という意味。 「し」は、「孤立」「静寂」の語義。「しーん」の「し」。 「ぬし」の「し」は、孤立した人や生きもののこと。「主人」も、その家でひとりだけの人だけだから、「ぬし」という。「ぬ」は「ぬるぬる」の「ぬ」。「の」よりももっと…

やまとことばという日本語・身体から森羅万象へ

「人は自然に心のオアシスを求める」などという。 しかし人間にとって自然の森羅万象は、そんなかんたんな対象ではない。ことに、自然を支配してゆく能力に乏しかった古代(原始)人の暮らしにおいては、むしろ脅威とうっとうしさをもたらすことのほうが多か…

やまとことばという日本語・動詞が先にあった

「青空」ということばは、ひとつの単語です。 英語なら「ブルー・スカイ」と、二つの単語が並んだことばになる。 「あおぞら」は、「もの」ではなく、自然現象という「こと」だともいえる。つまり、「空が青く広がっている」という動詞的なことばであるのかも…

やまとことばという日本語・「もの」と「こと」 2

「楽しい生き方」とか、「充実した生き方」とか、「美しい生き方」とか、「ほんとうの生き方」とか、「救済」とか、そんなものをお探しなら、「ほかを当たってください」というしかない。 このブログには、そんなものは、何もありません。 「生きてあるとは…

やまとことばという日本語・「もの」と「こと」

やまとことばの「もの」と「こと」は、語源の解明が非常に難しく、そして研究者にとっては、やまとことばの本質に関わるとても大きなテーマでもあるらしい。 でも、あまり持って回った解釈に走ると、かえって嘘っぽくなってしまう。 語源に関しては、できる…

やまとことばという日本語・「やまとことば」というタッチ

やまとことばは、「感慨」から生まれてきた言葉です。意味作用よりも先に、まず感慨がある。そのことの功罪あいなかばするところは、たしかにある。 それは、感慨を他者と共有したり、嘆きの感慨をととのえて(沈静化させて)ゆくためには有効であるが、意味…

とりあえずテキストは、中西進氏の『ひらがなでよめばわかる日本語』(新潮文庫)です。 言葉は、共同体が存在しない時代に生まれた。それは、共同体など必要としない時代だった、ということです 言葉は、共同体を必要としない心の動きから生まれてきた。と…