2014-01-01から1年間の記事一覧

せつないということ・ネアンデルタール人論32

1 「揺らぎ」とは「試行錯誤」であり「漂泊」のこと。「正しい」という答えを持たないこと。「これは違う」と認識してゆくこと。おそらくそこに人間の脳のはたらきの根源のかたちがある。人類史の知性や感性は、「これは違う」という認識を繰り返しながら進…

「これは違う」ということ・ネアンデルタール人論31

1 人の知能(知性や感性)は、正解や美を目指してはたらいているのではない。「これは違う」と判断する能力にあり、学者や芸術家は、最後に残った「違うとは言い切れないもの」をとりあえず正解なり美ということにしているだけなのです。だからこそ科学の歴…

現代の神・ネアンデルタール人論30

1 人は、人間性の自然(無意識)において、生きられない状態を生きようとする衝動を持っている。生きられない、すなわち生きてあることを許されていない存在になろうとする。わからない状態に身を置いて「何、なぜ?」と問う。小さな子供が、何度も転びなが…

人類史のエリート、そして人類の娼婦性・ネアンデルタール人論29

1 人類拡散の波は、およそ50万年前に氷河期の北ヨーロッパにたどり着いた。ネアンデルタール人の歴史はここからはじまっている。 ネアンデルタール人の遺伝子とアフリカ中央部のホモ・サピエンスのそれは50万年前に分岐したといわれています。つまりそ…

警戒心と緊張・ネアンデルタール人論28

1 予定調和の世界を生きようとする自閉症スペクトラムに対する人間性の自然としての「漂泊」の心模様、このことをもう少し考えてみたいと思います。 人類史において、自閉症スペクトラムはいつから登場してきたのだろうか。 それはたぶん、氷河期明け1万年…

はぐれてゆく・ネアンデルタール人論27

1 心模様としての旅=漂泊について考えています。 このことは「漂泊論」としてこれまでもさんざん考えてきたテーマだが、死ぬまで考え続けても解き明かせないのかもしれないし、人間存在の普遍的なかたちを問おうとするならどうしても避けて通れない。なん…

漂泊者は時の流れを知らない・ネアンデルタール人論26

1 自閉症スペクトラムとかアスペルガー症候群などといっても、そのことの健常者と非健常者の線引きはとても難しい。誰にだってそうした自閉症的な一面はある。ただ、内田樹氏のようにその傾向を人間の本性のようにいわれると困る、それは違うんじゃないか、…

漂泊者・ネアンデルタール人論25

1 人類はかつて、ろくな文明を持たない原始人の身で氷河期の極北の地に住み着いていた。 住み着いたのはどんな人々だったかというと、彼らネアンデルタール人は、生きるのが上手な人々だったのではなく、生きにくさを生きようとするメンタリティを色濃く持…

オキシトシンについての追記・ネアンデルタール人論24

1 正確にいうと、出産時に大量のオキシトシンが分泌される、ということらしい。 だったら、なおさらです。 オキシトシンは「身体の危機」において分泌される。そして「共生関係=一体感」からの解放として分泌される。それは、「共生関係=一体感」から解放…

ときめきのホルモン分泌・ネアンデルタール人論23

1 人類拡散の旅、という。人類学者が考えるその旅とは、住みよい土地を求めて移住してゆくことであるらしい。 つまり「生きのびるための生存戦略」としての旅、ということだろうか。彼らは、生存戦略を持つことや発達していることが人間性の本質であると考…

神のもとには踊りながら・ネアンデルタール人論22

1 どうして彼らは、人間性の本質・自然は「生きのびるための生存戦略」を追求することにある、と考えるのだろう。社会的に成功した人たちはそう考えることが有効だし、そのあとを追いかけている人も多い。しかしその動きから取り残された「この世のもっとも…

マルクスの誤謬・ネアンデルタール人論21

1 近代のマルクス主義国家の建設・運営が失敗に終わった原因についてはいろいろ語られているが、人間性の普遍としての人類史を「生きのびるための生存戦略」の追求の歴史として考えていたこともそのひとつとして挙げることができるはずです。そのコンセプト…

生きにくさを生きる・ネアンデルタール人論20

1 現在のこの国の集団的置換説のもっとも代表的なテキストはきっと、C・ストリンガーとC・ギャンブルの共著『ネアンデルタール人とは誰か(朝日選書)』にあるのでしょう。 僕にとってははなはだ不愉快な一冊で、読めば読むほど「こいつらほんとにアホだな…

もっと不埒に・ネアンデルタール人論19

1 この世の弱いものやだめな人間たちは、もっと不埒になってもいい。不埒にならないと生きられない。何はともあれ他愛なく世界や他者にときめいてゆく心を持たないと生きられない。社会に不満を抱いたり他者を憎んだりできる身分ではない。弱いものやだめな…

人類拡散と進取の気性・ネアンデルタール人論18

1 現代人は、生きのびようとする自己意識を基礎にして人間を考える。しかしネアンデルタール人をはじめとする原始人は、死者を思いながらこの生からはぐれてゆき、そこから生きはじめ、心が華やいでいった。そうやって、人と人が他愛なくときめき合ってゆく…

人間性の自然に・ネアンデルタール人論17

1 ネアンデルタール人について考えるとき、人類拡散はとても大きな問題です。それは原初の人類が二本の足で立ち上がったときからはじまっていた生態であり、彼らは、その700万年の歴史を背負って氷河期の北ヨーロッパに住み着いていた。 今どきの人類学…

すべては許されている。ネアンデルタール人論16

1 まあ「集団的置換説」なんて、原始時代にジェノサイドがあった、と言っているのと同じようなものですからね。その理屈にどう風穴を明けてゆくかがこのブログの課題です。 ・・・・・・・・・・・ ネアンデルタール人に欲求や理想などというものはなかった…

骨の話・ネアンデルタール人論15

1 現在の集団的置換説の論者たちは、ヨーロッパのクロマニヨン人がアフリカのホモ・サピエンスだと決めてかかっている。その前提で、アフリカのホモ・サピエンスのほうがネアンデルタール人よりも知能が優秀だったと主張している。 しかしそれは前提にはな…

ミーイズム・ネアンデルタール人論14

1 これ以上ネアンデルタール人論を続けても今まで書いてきたことの繰り返しになるだけだけれど、もうしばらく何がなんでもネアンデルタール人論です。 ここからはたぶん退屈な書きざまになってゆくのだろうが、ここからが思考実験の本番かもしれない。 この…

知能の問題で語るな・ネアンデルタール人論・13

1 現在の人類学では、「アフリカのホモ・サピエンスの知能」という問題設定で人類の文化が生まれ育ってきた契機を語ろうとするが、そうじゃないのです。ヨーロッパのネアンデルタール人こそ、人類の文化が生まれ育ってきたことの基礎になっている人々なので…

人類の文化の起源と発展・ネアンデルタール人12

1 クロマニヨンの洞窟壁画が生まれてくる基礎は、絵画技法の問題としてはネアンデルタール人のメンタリティや文化にあるのであって、アフリカのホモ・サピエンスの感性の延長上にあるのではない。 絵を描いたり埋葬をしたりすることも「象徴化の知能」から…

象徴思考などというな・ネアンデルタール人論11

1 ネアンデルタール人によって人間的な文化の基礎がつくられた。 このことについて考えるなら、「人間は言葉を話す存在である」という問題はひとまず避けて通れない。人類学では、その起源の契機を、「象徴化の思考(知能)を持ったことにある」という言い…

祭り・ネアンデルタール人論10

1 20〜15万年前にアフリカ中央部で発生したホモ・サピエンス。 ヨーロッパの先住民であるネアンデルタール人。 「多地域進化説」は、世界中すべての先住民がそのまま進化していっただけだといい、一方「集団的置換説」は、アフリカのホモ・サピエンスが…

洞窟壁画・ネアンデルタール人論9

1 現在語られている人類史のほとんどは、世に流通する下部構造決定論や労働史観などに洗脳されて、人類は生きのびるためにどのような生産活動をしてきたか、という問題意識の説明ばかりです。 生き物は生きようとする存在である……という認識が当然のように…

洞窟の眠り・ネアンデルタール人論8

1 ネアンデルタール人の社会では人と人が豊かにときめき合っており、それがそのまま集団のダイナミズムを生み、さらには地域社会の交流に発展し、その勢いでヨーロッパ全域に遺伝子と文化がたちまち広がり共有されていた。 彼らは、そのような社会をつくろ…

焚き火と語らいの場・ネアンデルタール人論7

1 人間性のなんたるかを問おうとするなら、なんといっても人と人は語り合う存在であるということは考えないわけにゆきません。 人類の「語り合う」という関係性は、ひとまずネアンデルタール人のところで確立された。彼らは、毎晩、焚き火を囲みながらみん…

人間的な集団の起源・ネアンデルタール人論6

1 ネアンデルタール人は滅んでなどいない。人類学者の妙なこじ付けでそういうことになってしまっているだけです。ネアンデルタール人論とはつまり、起源論です。ここから人類の文化や文明の歴史がはじまっているともいえる。 人類の言葉はもう数百万年の歴…

自然という環境世界・ネアンデルタール人論5

1 ネアンデルタール人は、氷河期の北ヨーロッパという苛酷な環境に住み着いていた。そこはもう、現在のシベリアやアラスカよりももっと寒いところだった。 ろくな文明も持たない原始人の身で、なぜそんなところに住み着いたのか? べつに住み着きたかったわ…

死者を思う・ネアンデルタール人論4

1 人は、歴史意識で生きている。これもまた、人類最初に埋葬という行為をはじめたネアンデルタール人の遺産です。 人類史において知能が発達すれば埋葬をするようになるとか、そんなものじゃない。死者を思う心の切実さは、知能の問題じゃない。定住生活を…

拡散の果ての人々・ネアンデルタール人論・3

1 ネアンデルタール人の文化は、人類共通の遺産です。われわれの思考や行動の基層がそこにある。 でも、この国の研究者やジャーナリストのネアンデルタール論はそんなことは何も語ってくれない。彼らにとってはアフリカのホモ・サピエンスこそ人類の基層で…