2009-08-01から1ヶ月間の記事一覧

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」18

弥生時代から古墳時代にかけての奈良盆地は、集落間の連携が、もっともダイナミックに起きている地域だった。 弥生時代末期の「纏向遺跡」も、そのあとに巨大な前方後円墳が次々に現れてきたことも、そういうことを証明している。 彼らは、よその土地からや…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源(うたふ)」17

奈良盆地においては、集団の「歌謡」が「神話」に発展してゆくということはなかった。 歌謡と神話は、もともと性格を異にするものであるらしい。 それは、「歌ふ」ということと「語らふ」ということの違いだろうか。 古代の日本列島においては、この二つの行…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」16

村上春樹の小説は、たぶん自足してゆくことが主題なのだろうと思います。 二項対立を止揚して、一方を排除しながら自足してゆく。 この世界のリアリティを獲得する(取り戻す)ことが救済だ、という。 それに対して、あの世のことがこの世に現れるというかた…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」15

古事記によれば、日本列島の起源は、イザナギ尊とイザナミ尊がセックスをして海の上に八つの島を浮かばせた、ということになっている。 古墳時代の人々は、奈良盆地の湿原を干拓してあちこちに人の住める台地や耕作地をつくっていった。上記の国生み神話は、…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」14

弥生時代後期の纏向遺跡は巨大な集落跡だが、そこには祭殿や集会所や鉄器や土器の工房などの集落間の連携のための施設があっただけで、住居の跡は見つかっていない。 これを、巨大な王権が存在した証拠だとほとんどの歴史家はいっているのだが、われわれは、…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」13

日本列島では、複数の男女が集まって求愛の歌を送ったり返したりする「歌垣」というイベントが縄文時代から定着していた。 みんなで歌い踊ること、そのカタルシスを共有しながら、しだいに「神話」や共同体のかたちになっていったのだろうか。 ただ、日本列…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」12(大原麗子)

大原麗子は、どうしようもなくわがままだった。 難病に冒されて動けなくなっているとき、いつも友達を呼び出しては、むやみやたらと自分の「嘆き」を訴えまくってやむことがなかった。 だから、慰め励ましてやっていた友達も、しまいにはうんざりして持て余…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」11(いなづま)

人と人のまとわりつきまとわりつかれる関係のことを、やまとことばでは「つま」という。 それは、とてもうっとうしい関係であると同時に、まったりと充足してゆく関係でもある。いいか悪いかはともかく、そういう関係を止揚してゆくことによって共同体が成り…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」10

日本列島において、集団が大きくなったり集団どうしの連携が生まれたりして「共同体」ができていったのは、弥生時代に入ってからだった。 縄文時代の集落は、女子供だけで構成されていたから、集落どうしの連携は生まれにくかった。女は、家や集落の中に閉じ…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」9

みんなが幸せになれる社会……などという。 そんなことをいったって、あなたたちのいう「幸せ」は、「人より幸せだ」と思うことではないのか。「幸せ」なんて、そのようなかたちでしか自覚できない。 人より幸せであることが、幸せなのだ。幸せの絶対的な基準…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」8

人間にとって「神話」ほど豊かに感情移入して信じられる話はない。 それは、この世界の外の「もうひとつの世界」で起きた話だ。 この世界は、生まれてから死ぬまでのたった数十年の仮の世界にすぎない。その外に広がる永遠に続く「もうひとつの世界」こそ本…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」7

僕が書くことのだめなところは、原典(テキスト)をちゃんと検証していないことにあります。 それどころじゃないんだよ、といえば言い訳になるけど、まあ人間がだらしなくできているから、めんどくさいのです。 古事記に出てくるオトタチバナヒメの話は、昔…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」6

前回のエントリーで、同じ文章を反復させて載せてしまいました。ごめんなさい。それは、現代では、もっとも耐え難いことのひとつらしい。そうだと思う。 神話の起源について書くことは、、先の見通しなどまったく立っていないけど、なんとなく長くなりそうな…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」5

共同体とうまく調和していないと、人は、自分など生きていてはいけないのではないか、ここにいてはいけないのではないか、という気分になってしまう。 そういう気分と無縁でいられる人は、幸せです。 しかしこのブログは、そういう気分をどこかに抱えながら…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」4

よけいなおせっかい、というのがあるじゃないですか。 僕が選挙の投票に行かないのは、そういうことかもしれない。 選挙の投票に行くと、なんかよけいなことをしに来ているという居心地の悪さがあり、帰るときにはいつも、なんかよけいなことをして来たとい…

祝福論(やまとことばの語源)・神話の発生3

あなたがもし、病気に苦しんでいるのなら、 あなたがもし、なくした恋に身もだえしているのなら、 あなたがもし、貧しさに追いつめられているのなら、 それは、誰かが人間であることの真実と向き合っていなければ、この世から人間であることの真実が滅びてし…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」2

中沢新一氏は、縄文時代からたくさんの神話がつくられていた、といっておられるが、それは違うと思う。 「神」という概念を持てばすぐ神話が生まれてくるかといえば、そんなものではない。 原初の「かみ」と、共同体の結束(絆)のためにイメージされていっ…

祝福論(やまとことばの語源)・神話の起源

「神話」とは何かという話になってくると、何かむずかしい学問的な問題であるかのような印象だが、ようするに、双葉山はすごかったとか、プロ野球の創成期に沢村栄治というすごいピッチャーがいたとか、そういういわば「伝説」と、本質的にはそう変わりない…

祝福論(やまとことばの語源)・ネアンデルタールと縄文人

拝啓、BROODY_Rさんへ あなたがブックマークされておられる中沢新一氏のページを少し拾い読みさせていただきました。 しかし、どうも納得がいきません。 縄文時代のこともネアンデルタールのことも、ステレオタイプに考えているだけで、ちっとも刺激…

祝福論(やまとことばの語源)・閑話休題

イカフライという人は、死ぬまで僕にまとわりつくつもりらしい。 僕に相手をして欲しいんだってさ。僕が打ちひしがれて気が狂うまで、まとわりつきたいんだってさ。 何度かハンドルネームを変えて擦り寄ってきたこともあったのだけれど、そのつど僕はそれを…

祝福論(やまとことばの語源)・「うつ」「はつ」

「うつ」の「う」は、「終わり」の語義。「うっ」と息がつまる感覚から生まれてきた音声。 また、「鬱」とか「打つ」というように、上から下に沈んでゆく動きのことも「う」という。 引力の法則で物は上から下に落ちて行くのが自然の常で、下に届いて動きが…

祝福論(やまとことばの語源)・「空蝉(うつせみ)」

桜の木の下の草むらで、蝉の抜け殻を見つけました。 それは、草の枝や葉の裏に、しがみつくようにして残っていました。 中身が空っぽのただの抜け殻なのに、なんだかまだ必死にしがみついているようなかたちになっていて、気になって仕方がない。 それで、つ…

祝福論(やまとことばの語源)・もう一度「あをによし」

僕は、聖人君子ではないから、ときどき自分をコントロールできなくなる。 いや、ときどきではない、全体的に見て、まったくコントロールできていない。 生きてゆくことなんかただ無邪気に人にときめいていればいいだけさ、と思うのだけれど、そんな自分にな…

祝福論(やまとことばの語源)・「せつない」

古代人にとっての旅は、つらく困難なものだった。 それでも彼らは、旅にあこがれ、旅の歌を多く残している。 旅は、故郷の人や景色や暮らしとの別れであった。しかしその「せつなさ」に、旅立つことのカタルシスがあった。 日本列島の住民は、せつない別れの…

祝福論(やまとことばの語源)・「いえ」「やど」

近ごろの草食系男子は家に対する愛着を素直に抱いていて、たとえば「正月は家族と一緒に過ごすものだと思っている」などとあっけらかんといったりするものだから、「こいつ、まだ乳離れしてないよ」、とガールフレンドからあきれられたりする。 幸せな家族と…

祝福論(やまとことばの語源)・「草枕(くさまくら)」

旅は、隠されてあるものに気づいてゆくこと、そういう感慨から「たび」という音声がこぼれ出る。これが、「たび」の語源だ。 何が隠されてあるか、ではない。日本列島の旅の醍醐味は、隠されてあるというそのことに気づいてゆくことにある。隠されてあるもの…