2017-05-01から1ヶ月間の記事一覧

言挙げしない・神道と天皇(47)

1 仏教における神は、仏に帰依していった存在であり、この世界を支配する存在ではない。つまりそのとき人々は、支配する存在(=仏)に願い事をするのではなく、「帰依する」という心映えに対する親密感を共有しながら「神」を祀り上げていった、ということ…

受難(災厄)を受け入れるということ・神道と天皇(46)

1 日本列島の神は、仏教伝来以降に生まれてきた。 古事記の神々の名の多くがなぜあんなにも長ったらしく説明的であるかということだって、名付けられてまだ間がないことを意味している。古くから伝えられてきたのであればもっと簡略化した名になっているは…

宗教は死を怖がらせる装置である・神道と天皇(45)

1 このレポートを、「仏教伝来以前の日本列島に宗教は存在しなかった」という仮説から書きはじめることは、それなりに実験的で危ない試みかもしれないが、僕は大まじめでそう確信している。 縄文時代や弥生時代の社会が原始宗教(アニミズム)の上に成り立…

生きられなさを生きる覚悟・神道と天皇(44)

1 ここでは、「日本」とか「日本人」という言葉はなるべく使わないようにしている。べつに右翼でもないからそんな言葉に愛着はないし、ひとまず「日本列島」とか「日本列島の住民」ということにしている。 僕だって伊勢生まれのまぎれもない日本人ではある…

知性はこの生に幻滅する・神道と天皇(43)

1 人はなぜ「神」をイメージするのか? 心はこの生の外に超出してゆくはたらきだから。そしてそこからこの生を見下ろしてこの生を支配しようとする欲望を持ってしまうから。 人は、この生の外の存在として「神」をイメージしてゆく 人を支配したがるのは、…

生きにくさを生きるということ、問うということ・神道と天皇(42)

1 生きものは、生きにくさを生きながら、この生とは何かと問い続けている。生きるいとなみは、問い続けることだ。もちろんこのことに自覚的であるのは人間だけかもしれないが、生きものが「そこに食いものがある」とか「そこに敵がいる」とかと気づくことだ…

「霊魂」と「たましい」は同じか?・神道と天皇(41)

1 神道で「人の道」というとき、それは世俗的宗教的な「道徳」というようなことではなく、「倫理」といったほうが正確かもしれない。人として「なすべきこと」というより、「せずにいられないこと」、べつに誰が決めたのでもなく、人間性の自然として、誰も…

すべては赦されている・神道と天皇(40)

1 天皇は、何もしない。しかしそれは、この世界のすべてを許している、ということでもある。 すべてを許している支配者など存在しない。すべてを許していたら支配なんかできない。集団の秩序と安定を守るのが支配者の仕事で、そのために民衆を裁く。 天皇は…

無力で無能であることの嘆きこそ美しい・神道と天皇(39)

1 神道は、「宗教」ではない。「人の道」でもない。われわれの心は、この世界に対してであれこの生に対してであれ、深く腑に落ちて納得することを渇望している。そういうのを「悟り」といったりするのだろうが、古代および古代以前の日本列島の住民は、それ…

水辺の馬は水を飲まない・神道と天皇(38)

1 神道の「かみ=かむ」という言葉には、政治や宗教に対する拒否反応が含まれている。それは、この生に執着することに対する拒否反応でもある。 人は、心の底の無意識の部分では、この生が取り返しのつかない過ちであることを嘆きながら、それでもこの世界…

拒否反応は大事だ・神道と天皇(37)

1 日本列島の住民は天皇に対する無垢な憧れがあり、両者のあいだに立った権力者は、その関係を利用していともたやすく民衆を支配してしまう。この国の権力支配の歴史は、最初からそのような構造の上に成り立っていたのであり、そうやって1500年以上天皇…

戦後社会が失ったもの・神道と天皇(36)

1 神道は、仏教伝来を契機にして生まれてきた。日本列島土着の宗教だったのでもなんでもない。それ以前の日本列島に、土着の宗教(=アニミズム)などというものは存在しなかった。 つまり、「神」をあらわす言葉は存在しなかった。 もしも土着の宗教があっ…