2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

「ケアの社会学」を読む・44・ホメオスタシスとは?

1・学んだことを上書きしてゆく 人間は、学んだことを「上書き」してゆく。学んだことを展開していったり、そこから新しく発見したりしてゆく。こうして人類の文化や文明が発達してきた。 学んだだけでは終わらない。なぜかといえば、人間にとって学ぶこと…

「ケアの社会学」を読む・43・自己意識

1.「自分」という意識 基本的に、人間は他者に影響されない存在である。 人間の本性としての心のかたちは、誰でも一緒だろう。したがって、誰も変えることはできないし、誰からも変えられない。 人と人は、そういう本性として心を共有しながら連携し結束し…

「ケアの社会学」を読む・42・影響力という権力

1・one of them 人間は、根源において、猿よりも弱い猿である。そのようにして二本の足で立ち上がるという歴史がはじまった。 人間は、「生きられない」弱い猿である。「生きられない」という自覚の上に、人間の生きるコンセプトが成り立っている…

「ケアの社会学」を読む・41・正義の不可能性

1・原発廃止は正義か? たとえば、「原発はよくないから廃止せよ」と、自分たちが正義のような顔をして合唱しても、それはもうファシズムと一緒だから、みんながついてくるとはかぎらないし、みんながついてくる社会になったら、それはそれで怖い。 正義の…

「ケアの社会学」を読む・40・予知能力という制度性

1・危機を生きる 誰かがいう、人々は平和な時代になったために動物のような危険予知の能力を失って不安になっている、と。 しかし動物がはたして、未来の危険を予知する能力を持っているだろうか。彼らはただ、「いまここ」の異常や異変に敏感なだけだろう…

「ケアの社会学」を読む・39・落下感覚

1・自分にしがみつくという制度性というか不自然 自分を捨てなければ「受け入れる」という心の動きは起きてこない。 社会の規範を受け入れる、という。しかしそれは、受け入れているのではない。自分を守るために社会の規範にしがみついているのだ。 そして…

「ケアの社会学を読む」・38・介護をされる身になるということ

1・状況を受け入れるということ どうせこちらはもうすぐ死んでゆく身なのだから、この世の中がどうなってゆくかということも、どうなってゆかねばならないかということも、あまり興味はないないわけですよ。 未来の社会は、未来の人たちのものだ。われわれ…

「ケアの社会学」を読む・37・うまく死んでゆけるか?

このシリーズはそろそろ終わりにしたいのだが、頭の中でいろんな問題が錯綜してしまって、なかなか結論にたどり着けない。こんなことばかり書いていたら、せっかくの数少ない読者にも見放されるかもしれない。 たいして変わりばえのしないことばかり書いてい…

「ケアの社会学」を読む・36・分裂病について考える

1・「他者の承認を得る」という嘘 分裂病のことに関してはただの無知など素人である僕が発言するのはたんなる暴走であることは承知であるが、今、どうしても書かずにいられないわけがある。 しかし、そのわけはいわない。 ただもう、世界中に向かってこうい…

「ケアの社会学」を読む・35・終末期の過ごし方

1・「いまここ」でこの生や世界を完結させること 「生きられるもの」の論理は、社会にフィットして生きているかぎり健康な論理になり得るが、年老いたり病気になったり失業したり失恋したりして社会から離脱すれば病理的な観念のはたらきになる。 またそれ…

「ケアの社会学」を読む・34・社会意識という制度性、あるいは倒錯

1・社会意識とは自意識のこと 上野千鶴子氏や内田樹先生は、大人として社会意識を持て、という。 社会意識¬=市民意識を持つことが大人の資格であるかのようにいわれている世の中だ。 公共心、すなわち「世のため人のため」という意識。団塊世代は、そうい…

「ケアの社会学」を読む・33・死んでゆく作法

1・「さよなら」を告げて死んでゆく 身体は「生きられない」存在であり、観念は永遠に「生きられる」。人は、身体を置き去りにした観念的な存在になることによって、どこかしらで永遠に「生きられる」存在であるつもりになってしまっている。そうして、天国…

「ケアの社会学」を読む・32・日本語で思考する

1・けっきょくは、人と人の関係の問題なのだ 「人情の機微」という言い方があいまいだというのなら、「生き物としての実存感覚」だと言い換えてもよい。介護士の離職率が高いという問題は、たぶんそういう問題なのだ。 体がきついとか賃金が安いからという…

「ケアの社会学」を読む・31・介護は経済行為か?

いま、老人介護の現場で、介護士の離職率が高いとか、介護をする家族のものが精神的に追いつめられるとか、さまざまな混乱が起きている原因のひとつに、介護をされる老人が死を受け入れることができなくて大いに騒々しい存在になってしまっていることもある…

「ケアの社会学」を読む・30・介護のストレス

この本で上野千鶴子氏は、介護されるものの都合のいいことばかり並べ立てて、介護する人の身になって考えるということはほとんどできていない。それは、賃金が安いとか体がきついというだけの問題ではない。 介護をすることのストレスは、介護するものとされ…

「ケアの社会学」を読む・29・介護するものとされるもの

1・人間は歳をとるとぶざまになるのか 誰もがみずからに与えられた有り合わせの命をけんめいに生きているだけじゃないか……と思えば、誰も悪者にすることはできない。 でも、自分も含めて人間というのはどうしてこうもぶざまな存在なのか、という思いにもさ…

「ケアの社会学」を読む。28・認知症的思考

1・生きてあることの華と夢 老人介護とは、介護をする方もされる方も、誰もが死と向き合うほかないことを余儀なくされる場である。何はさておいても、まずそのことが問われなければならない。 人間は、根源において、「生きられないもの」として存在し、他…

「ケアの社会学」を読む・27・介護することは労働か

1・せずにいられないこと 上野千鶴子氏が扇動するように、日本中の老人が「介護を受ける権利」を叫んで立ち上がるようになるだろうか。これが、上野氏の「新しい社会を構想する」ことであり、これによってよりよき介護社会が実現するのだとか。 老人は、「…