2012-10-01から1ヶ月間の記事一覧

幽体離脱と霊魂・「漂泊論B」19

1・故郷に帰ることは消えてなくなることだ 吸い込まれるような秋の青空を見上げればいっそう嘆きが深くなる、と、ある人がいった。 それは、なんとなくわかるような気がするわけですよ。 それは、生きてあることのカタルシスの極みであり、このままこの世か…

雲になる・「漂泊論B」18

1・「安定・秩序」に潜り込んでゆこうとする制度性 赤ん坊には、第三者を排除しようとする制度的な「自分という意識」は希薄だろう。 「制度的な」とは、お母さんとの1対1の関係ではなく、集団的な三角関係の意識である。 この社会の制度性は、三角関係の…

じたばたする・「漂泊論B」17

1・それは、現代社会の制度性にすぎない 現代人は、生きることの「目的」とか「意義」のようなものを探している。 そんなものどうでもいいじゃないかと思うのだけれど、誰もがどこかしらで知らず知らずそういう心の動き方をしている。 生きることの「目的」…

原始社会に「霊魂」という概念はなかった・「漂泊論B」16 

1・原始時代の場合 現在の人間社会は、三角関係の上に成り立っている。 この関係を上手に生きることができる人間が出世をする。 われわれは、先験的に三角関係の中に置かれている。 2対1になって第三者を排除してゆくという関係。そうやって、人と人の結…

「生き延びる」だなんて・「漂泊論B」15

1・「生き延びる」だなんて、どうしてそんな卑しい物言いを平気でするのか 「霊魂」などというものは人間の心がつくりだしたイメージというか概念にすぎない、と頭でわかっていても、われわれはどこかしらでその存在を信じている。 「どこかしら」どころか…

幽霊を見たか・「漂泊論B」14

1・ここで死んでもかまわないと覚悟すること 内田樹先生、「幸せになりたい」といっても「生き延びたい」といっても同じなのですよ。ほんとにあなたは、どうしようもない俗物だなあ。 どちらも、日本列島の伝統の無常感にはそぐわない。 むしろ「生き延びた…

無常観という激情・「漂泊論B」13

1・「生き延びる」なんてどうでもいいことだ われわれは人間であると同時に、日本人でもある。 日本人であるとは、どういうことだろうか。 日本人であることの長所と短所、というような問題の立て方はしたくない。長所は短所でもあるし、短所は長所でもある…

人類の未来など語ってくれるな・「漂泊論B」12

1・コミュニケーションという名のサディズム 世の中はこれからどのように動いてゆくのだろう、と思う。 しかし、どうならなければならないか、というような議論にはあまり興味がない。 幸せになっても不幸になってもいいのだ。 この世の中にはいろんな人が…

コピペして記憶する脳・「漂泊論B」11

1・現代の市民社会は、人類の歴史の達成といえるか <承前> 迷信=superstition 迷信といえば、何だって迷信だ。 われわれの意識そのものがひとつの迷信かもしれない。 この世界、この宇宙がほんとうに存在するものかどうかなんてわからない。…

迷信「漂泊論B」10

<はじめに> ブログランキングに登録しました。 どちらかというと世間に背を向けたようなブログだからそんな場に参加する柄でもないのだけれど、だからこそたとえ少数でも「あなた」にこの言葉を届けたいという思いもそれなりに切実です。 このブログは直立…

霊魂の起源・「漂泊論B」9

ふまれても消えぬ霊魂の憎らしさ(鬼鬼) やせがまんしてさかさまにおちてゆく(虫虫) うたかたの歌唄ううたたねの歌唄い(魚魚) 戻り道戻らぬ犬の影ひとつ(月月) 1・「霊魂」の歴史は、それほど古くはない 人類はどこでどのようにして「霊魂」という概…

ノーベル賞雑感・死者との対話

このごろ「霊魂」という言葉がとても気になっている。 あまり好きな言葉ではない。 ノーベル賞の山中教授は、こういった。 「自分はまだ研究の成果を実現していない。死ぬまでにそれを実現したら、あの世で父に報告できるかもしれない」、と。 つまりこの人…

「鬼」の文化・「漂泊論B」7

昼寝する眉に来世が止まりおり(犬犬) ああアホくさいわが人生、鬼に笑われるぞ……蛇足 1・人間は鬼の心を持っているか 日本列島の伝統文化といっても、「もののあはれ」や「わび・さび」だけではすまない。 「スサノオ」や「ヤマトタケル」のような「荒ぶ…

縄文人の死生観・「漂泊論B」6

<はじめに> ブログランキングに登録しました。 どちらかというと世間に背を向けたようなブログだからそんな場に参加する柄でもないのだけれど、だからこそたとえ少数でも「あなた」にこの言葉を届けたいという思いもそれなりに切実です。 このブログは直立…

死に対する親密さの文化・「漂泊論B」5

1・大切なのは「生き延びる」ことではない けっきょく人間には、食い物よりも大事なものがある。 人と人の関係がうまくいかなければ、われわれは生きてゆけない。 われわれは、人と人の関係をよりどころにして生きている。人に対するときめきが人間を生かし…

縄文時代の旅・「漂泊論B」4

1・日本列島における山歩きの伝統 縄文時代のことを少し書いておこうと思う。 縄文時代について考えることは、人間はなぜ旅をするかというテーマと向き合うことでもある。 考古学の資料によれば、縄文人の男の多くは足の骨が変形してしまっていたのだとか。…

途方に暮れている・「漂泊論B」3

1・「わからない」と途方に暮れている 人間の心の中の原初的な混沌、というとき、それは「凶悪でたけだけしい心」ではなく、「びくびくして途方に暮れている心」を指すのであり、すなわち「逃げ隠れする心」こそが人間の自然であり原初的な心のかたちなのだ…

原初的な混沌・「漂泊論B」2

1・人間は、弱い猿だった 一般的には、人間の心を語るときに「原初的な混沌」というと、何か凶悪でたけだけしい気持ちのことのようにいわれることも多いが、そういうことではないと思う。 一般的には、二本の足で立った瞬間から猿よりも大きな体と発達した…

やまとことばの「まつり」・「漂泊論B」1

1・第二章の前書き 縄文時代から古代にかけての歴史を通して、日本的な心性の源流を考えてみたい。 日本人論はすでに語り尽くされている観があるが、それでもまだわれわれはその答えを探しあぐねている。 日本人とは、日本人とは何かと問い続ける民族である…

人間は未来の危機を思わない・「漂泊論」91

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