2018-02-01から1ヶ月間の記事一覧

終わりに(夢見る女神)・初音ミクの日本文化論(29)

1 日本列島の文化は処女性にある。 この国の伝統において神は処女であり、「処女=思春期の少女」の本質は「悲劇性」にある。彼女らは、無垢な幼子のままでいたいのに体はさまざまな穢れを負いながら大人の女になってゆかねばならない段階にさしかかってい…

新しいコミュニティ・初音ミクの日本文化論(28)

1 初音ミクはマンガのように目が大きくてかわいいけれど、人間の「美人・美少女」という範疇に当てはまる存在ではない。初音ミクは生身の女の代用品ではないし、この世の存在ではないのだから、それでいい。 初音ミクは、若者たちが「もう国なんか信じない…

死なないで……世界は輝いている・初音ミクの日本文化論(27)

1 この世の中はろくなものじゃない……そういう深い幻滅が、若者をして死に向かわせる。彼らにとっては生よりも死のほうが親密なものになっている。身体が成長してゆくことすなわちこの生のエネルギーが活性化してくることは、死に対して親密になってゆくこと…

聞こえてくる・初音ミクの日本文化論(26)

1 電子音といえば未来的なイメージだから、初音ミクの歌もそんな傾向なのかというと、それだけではない。 初音ミクのファンたちは、少女ボーカロイドの電子音が、もっとも未来的な声であると同時にもっとも原初的な声でもあることに気づいた。彼らはそのは…

女神のかなしみ・初音ミクの日本文化論(25)

1 自我とか自意識といっても、「自己撞着」のことでしょう。 この社会では自分を守ろうとする自己撞着を失ったらうまく生きてゆけないが、それは、自分を忘れて夢中で考えたり他愛なく世界の輝きにときめいたりする知性や感性が鈍磨してゆくことでもある。…

夢まぼろし・初音ミクの日本文化論(24)

1 西洋ではいまだに「神は存在するか」というような議論がさかんに繰り返されているらしいが、日本人はそんなことに興味はない。なぜなら、「存在する」ということそれ自体に興味がないからです。存在することの尊厳なんか信じない。 この世界はたんなる「…

女の時代・初音ミクの日本文化論(23)

1 戦後日本の女の代表的なトレンドは、まずモガ(=モダンガール)と大和撫子の伝統を兼ね備えて「永遠の処女」と評された原節子にはじまり、60年代になって処女のひたむきさと愛らしさの象徴として吉永小百合がもてはやされ、高度経済成長が本格化した7…

政治なんか知らない・初音ミクの日本文化論(22)

1 まあ日本文化とは何かということはさんざん語り尽くされているわけだが、それでも日本人の誰もがいまだにそれを問わずにいられない思いをぬぐい切れずにいる。 日本人とは、永遠に「日本人とは何か」と問い続けてゆく民族であるのかもしれない。 それはき…

天使の羽のよう・初音ミクの日本文化論(21)

1 「かわいい」とは、「生きられないこの世のもっとも弱いもの」をいつくしむ心のこと。それは、この世のもっとも崇高な存在である。なぜなら、この世でもっとも「死」に近いところに立っている存在だから。 そういう意味で、初音ミクこそ「生きられないこ…

原初の嘆き・初音ミクの日本文化論(20)

1 「非存在の女神」である初音ミクは、生きものじみた肉や骨や内臓を持った存在ではない。人のようで、人ではない。人ではないようで、人である。その微妙な「裂け目」から現れ出て消えてゆく。 まず電子音であるその声は、音と声の「裂け目」から聞こえて…

幽霊を見た・初音ミクの日本文化論(19)

1 初音ミクは理想の思春期の少女としての異次元の世界の女神であり、その「異次元性」こそ思春期の少女の本質=魅力であるわけで。 その姿は青緑の思い切り大げさなツインテールの髪がトレードマークになっているわけだが、かわいいと同時に、何かひんやり…

涙の人類史・初音ミクの日本文化論(18)

1 初音ミクは異次元の世界の住人だから、初音ミクのファンたちは、国家のことを思う心をすでに失っているし、日本人であるという自覚も薄い。日本人はもともと国家のことを思う民族ではなかったから、初音ミクを祀り上げてゆくことに違和感がなかった。 そ…

「チュチュ」という音感・初音ミクの日本文化論(17)

1 初音ミクの曲とAKBのそれの違いを比較検討する能力が僕にあればいいと思うのだけれど、それは手に負えない。でも、可能な範囲でちょっと考えてみることにします。 AKBの曲はきっと、有能な作詞家と作曲家が「万人に受ける」とか「時代にフィットしている…

ロリータの受難と神性・初音ミクの日本文化論(16)

1 初音ミクときゃりーぱみゅぱみゅはだいたい 同じころのデビューで、もちろんきゃりーのほうが先行して世界的な人気を獲得していったわけだが、その魅力はともに存在感の薄さというか人間臭くないところにあったのでしょう。その他界性……。 あからさまな人…

日本人であることの証明・初音ミクの日本文化論(15)

1 バブル経済の崩壊とともに高度経済成長は終わったし、相次ぐ大震災の果てに原発事故も起きたし、現在のこの国に生きていれば、どうしても「世界の終わりの場に立っている」という気分はついてまわる。個人の暮らしの環境がなんであれ、世の中そのものがそ…

ファーストコンタクト・初音ミクの日本文化論(14)

1 初音ミクは、ひとまず現在のサブカルチャーの分野で一定の認知を得た感がある。テレビコマーシャルに登場したりして、日本人のほとんどがすでにその名を知っている。そこで、これが一過性のブームで終わるのか、それともひとつのジャンルとしてこれから先…