2010-07-01から1ヶ月間の記事一覧

鬱の時代12・育児放棄(ネグレクト)

ゆうべNHKで、母親による幼児殺害のニュースを延々とやっていて気が重くなった……と、あるブログで語っていた。 ひとこと「気が重くなった」それだけである。そのひとことですますところに、このブログの管理人の知性と人格の高潔さがにじみ出ているらしい…

鬱の時代11・日本的な鬱

運命を受け入れる、というのは、日本的な感性であるらしい。 西洋かぶれした内田樹先生は「運命は、幸せな未来を想像しながらつくりだしてゆくものだ」といっておられる。そんなこといったって先生、明日から秋になればいい、と思ったって、そうはいかないで…

鬱の時代10・生きにくい

したがって、生きにくいことが生きてあることの基本的なかたちなのだ。 生きてあることのダイナミズムは、そこにこそある。 追いつめられてあることそれ自体を生きることができなければならない。追いつめられなくなればそれですべてが解決するというわけで…

鬱の時代9・知性の活動

人間は、存在そのものにおいて、すでに追いつめられている。 原初の人類は、群れの密集状態に追いつめられて、二本の足で立ち上がっていった。そして二本の足で立っていることは、胸・腹・性器等の急所を外にさらし、他者の視線から追いつめられている姿勢に…

鬱の時代8・若者は家族という空間を怖がっている

今どきの若者たちが結婚したがらないのは、家族をつくることを怖がっているからだろう。 べつに、金がない若者だけが結婚しないのではない。金があってもできない若者がたくさんいる。 なぜ怖がるのか。 家族の価値を教えてやれば解決するというような問題で…

鬱の時代7・優越感と劣等感

現在の戦後世代の大人たちが子供時代にぬくぬくと自意識をふくらませてくることができたのは、おそらく幾重にも幸運が重なっているのだろう。社会そのものが自我の拡大を止揚する時代だったし、親も学校もむやみな監視をして抑圧することがなかった。とくに…

やまとことばの語源・いけにえ

最近、「いけにへ」ということばが気になっています。 そこで、折口信夫がこのことばの語源をなんと解釈しているのかを調べてみました。 折口の文学的想像力と、僕のみもふたもない一音一義の想像力と、どちらが古代人の心(無意識)に推参してゆくことがで…

欝の時代6・監視する装置

自意識がなぜうっとうしいかといえば、自分で自分を監視し検閲してゆく心の動きだからだ。たとえばそれは、鏡に写った自分から自分が見られているようなうっとうしさであり、そうやって自意識過剰になって体がうまく動かなくなってしまうし、キャリアウーマ…

欝の時代5・打ちひしがれる

太平洋戦争が終わったのが1945年、太宰治の心中は1948年、そして三島由紀夫の割腹自殺は1970年に起きた。このあたりまでがひとまず「戦後」といわれている時代で、このあたりまでに生まれた世代を「戦後世代」ということができる。 このあと日本…

閑話休題・大王崎

子供のころ僕は志摩半島の「和具」というところに住んでいたことがあって、波切(なきり)の大王崎に二度ほど父に連れられて行ったことがある。そこは志摩半島の真ん中あたりだが、ちょっと突き出た地形で、灯台があることで有名だった。 一度はバスで、二度…

鬱の時代4・ここにいてはいけない

内田先生がこんなことをいっておられた。 今回の参院選の結果は、民衆が政治過程がフリーズすることを望んだからだ、と。 ばかいってんじゃないよ。 そんなことはただの「結果」であって、投票した一人一人は、それぞれの思いがあった。民主党にがんばって欲…

鬱の時代3・酒場女ではないんだけどさ

太宰治が玉川上水で心中した相手は、正確には、酒場の女ではない。 酒場の女ではないが、「核家族」の外に置かれていたという意味では、酒場の女と同じ立場であり、太宰も、酒場の女同様の「遊び」の相手として友人に紹介していた。 山崎富栄という。 美人で…

閑話休題・返信「親を恨むこと」

このところ時間の余裕がなく、コメントの返信もエントリーの更新もできないでおります。 ひとまず、「通りすがりのサル」さんへの返信をここで書いておきます。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ たとえば、末期小児がんの子供は、親を恨んで…

鬱の時代2・追いつめられる自意識

閑話休題 ワールドカップについての、とてもすてきなサッカーコラムのブログを見つけた。 ブログのタイトルは「社会不適合者は羊男の夢を見るか?」というもの。なかなかセンシブルで凝っている。(悲しいことに、誰かにパクられてもいるらしいが) そしてタ…

鬱の時代

小林秀雄は、「自意識にけりをつける」といった。それは、みずからのこのうっとうしい「自意識」にけりがつけられると思ったからではない。 「自意識にけりをつける」という問題に、解決策などない。誰だって、自意識から解き放たれて人や世界にときめいてい…

「日本文化論のインチキ」のインチキ

「日本文化論のインチキ」(小谷野敦 著)という本のことを知らされて僕は、かなりびびった。おまえの考えていることなどこの本の中に全部書いてある、といわれたら、僕のこの三年間はいったいなんだったのだろう、ということになる。 だから、無理してでも…

閑話休題・「日本文化論のインチキ」(小谷野敦 著)という本

ある人のブログで、そういうタイトルの新書のことが紹介されていた。著者は、東大の学者先生らしい。 既成の日本文化論100冊を片っ端から批判しまくっているとかで、興味を持った。と同時に、ちょっとびびった。 そういう先生から見れば、僕がここ三年余…

反「日本辺境論」・可視範囲

(承前) 吉田拓郎は「今はまだ人生を語らず」と歌ったが、「今ここ」を生きて人生どころでないのが若者や子供であろうし、そういう気分は六十歳を過ぎた僕にだってある。 この世は無常、人生なんか語らないのが大人だ、という気分は、日本列島の歴史の水脈…