2017-02-01から1ヶ月間の記事一覧

死に対する親密な感慨・神道と天皇(5)

1 現在の未開の民族の宗教が、そのまま原始宗教(アニミズム)であるとはいえない。それは、文明社会から伝播してきた観念のはたらきにすぎない。文明社会が持ち込んだ観念によって、彼らは宗教に目覚めたのだ。 たとえばポリネシアなどの南アジアの太平洋…

幸せ自慢という不毛・神道と天皇(4)

1 『神は妄想である』という本でドーキンスが宗教を否定してゆく語り口は、きわめて過激で説得力がある。無数の宗教原理主義者が跳梁跋扈している現在のこの世界で、よくこんな本が書けたものだと思う。世界中を敵に回している、という感がある。その勇気は…

神なんか知らない・神道と天皇(3)

1 日本列島の仏教伝来以前においては、「神」は存在しなかった。 宗教なんかなくても、神なんか知らなくても、人は生きていられる。 日本人ほど神という意識がいいかげんな民族もいない。いいかげんでもこの生は成り立つ。そしていいかげんだから心の中に「…

原始宗教(アニミズム)なんかなかった・神道と天皇(2)

1 先史時代の日本列島の住民は「神」というものを知らなかった。 まず、このことからはじめないといけない。 それは、仏教という大陸文化の伝来とともにはじめて知ったにすぎない。 縄文時代や弥生時代には、「神」はおろか、原始宗教(アニミズム)という…

進化論という無神論・神道と天皇(1)

はじめに 1 ネアンデルタール人論はしばらく中断することにしました。 今、リチャード・ドーキンスの『神は妄想である』という本を読んでいます。これが、とても面白く刺激的です。で、僕もそういうことが書きたくなりました。読んでいる途中だからこの本の…

狂気としてのやさしさ・ネアンデルタール人論269

1 ムンクの「叫び」という絵は、誰もが目にしたことがあるに違いない。 発狂寸前のあの顔、それともすでに発狂してしまっているのか。 ムンクはノルウェーの画家で、極寒の地の長く厳しい冬に閉じ込められたら、誰だって心の中にあのような騒々しくエキセン…

愛の不可能性・ネアンデルタール人論268

1 人間は社会をつくる生きものだといっても、社会の中で生きることがよろこびであるはずもなく、社会はあくまで「憂き世」だ。その「憂き世」であることの「生きられなさ」をやりくりしながら、命や心のはたらきが活性化してゆく。 「生きられなさ」の中に…

生きる権利などない・ネアンデルタール人論267

1 ネアンデルタール人は、家族という単位を持たなかった。家族を持ったことは人類の文化であるが、家族の外の「異質な他者」にときめきながら恋をしたり友情を持ったりするのも、猿とは違う人間ならではの文化でもある。家族は、血のつながりを大切にするた…

物語の向こう・ネアンデルタール人論266

1 ドーキンスやダーウィンがいうように、おそらく生きものの命のはたらきや心のはたらきはすべて遺伝子の存在の仕方に還元できるのだろうが、その遺伝子の存在の仕方そのものは、彼らがいうような「利己的」とか「適者生存」とかというようなことではないの…

生きられなさに身もだえするということ-ネアンデルタール人論265

承前 『利己的な遺伝子』の感想は、ひとまず今回で終わりにしたい。 1 ミトコンドリア遺伝子は、エネルギーのはたらきをもたらすはたらきがあるらしい。この遺伝子というかDNAの組成が、50万年前ころからアフリカとヨーロッパではどんどん違っていった…