2017-04-01から1ヶ月間の記事一覧

畏(かしこ)き姿・神道と天皇(35)

1 もともと神道は、人間が神になることによってはじまった。 人間を神にしてゆくのが神道なのだ。天皇を神にするのはよくないなどといっても、日本列島の「神(かみ)」なんて人間がなれる程度のものだから、それで全然かまわない。それはべつに、この世界…

鎮守の森の神・神道と天皇(34)

1 天皇は、仏教伝来とともに「神」になった。 日本列島の住民はそれまで「神」を知らなかったが、それ以前からすでに天皇を祀り上げていたし、祀り上げる対象を「神」というのかと理解した。だったら、天皇は「神」以外の何ものでもない、と。 天皇を神だと…

この生の向こうは何もない・神道と天皇(33)

1 氷河期の日本列島は、大陸とつながっていた。そして人や動物の移動のいわば「行き止まり」の地だったから、人も動物もたくさんいた。 人々は平地の草原で暮らし、草食動物の狩りをしていた。石器の製作技術は、世界でもっとも進歩していた。 しかし氷河期…

「けがれ」はどこから生まれてくるか・神道と天皇(32)

1 本居宣長は、「けがれ」は「黄泉の国=死の世界」から生まれてくる、といったが、それは違う。 古事記における「黄泉の国」は、真っ暗闇の世界ということになっている。 イザナギは、死んでしまった妻のイザナミのことが忘れられず、黄泉の国まで追いかけ…

「かみ」というやまとことば・神道と天皇(31)

1 歴史について考えることは、われわれが生きてある「今ここ」について考えることでもある。「現在」という「今ここ」のこの世界に漂っている空気の気配には、縄文時代以来1万3千年の歴史が宿っている。 今ここと昔では違うし、今ここも昔も変わらない部…

どんなふうに生きてゆけばいいかわからない・神道と天皇(30)

1 縄文人は、みずからの心や身体の「けがれ」と向き合いながら生きていた。 つねにそこに立ち返るということ、そうやって1万年の歴史を歩んできた。 伊勢神宮が20年に1度の式年遷宮を繰り返すのも、そのつど「けがれ」を自覚し「みそぎ」を果たしてゆこ…

この生はただのお祭りだということ・神道と天皇(29)

1 承前 「けがれの自覚」こそが、日本列島の伝統的な精神風土の基礎になっている。「けがれ」をそそいで「みそぎ」を果たしてゆく行為として「祭り」の文化が生まれ育ってきた。 まあ、縄文人の女が夜なべ仕事で土偶や火焔式土器をつくることも、それはそれ…

「けがれ」の自覚・神道と天皇(28)

1 「アンチ・エイジング」とか「ダイエット」とか、老いも若きも自分の体のことが気になって仕方がない世の中らしい。 バブルのころは思春期の若者の「朝シャン」というのが流行って、それは今でも続いているのだろうか。 「禁煙・嫌煙」のムーブメントも、…

移ろいゆくもの・神道と天皇(27)

1 世の歴史家の多くは、人類の歴史において知能や文化が進化発展すれば自然に「宗教」や「階級」や「共同体(国家)」が生まれてくると考えているらしいが、そうかんたんに決めつけてしまっていいのだろうか。思考停止ではないのか。今どきは、プロの研究者…

「自我=主体」などというものはない・神道と天皇(26)

1 宗教を信じることは、おそらく「自我=自意識」の問題だろう。 「自我の目覚め」とか「自我の確立」とか、何かそれが人間性の本質か自然であるかのようにいわれることも多い。「自我」とか「主体性」という概念を否定してしまったら、現在の多くの哲学や…

「愚民」であることの大切さというのもある・神道と天皇(25)

1 古事記に関わっていたらきりがないので、ひとまず中断して次に移ることにする。 とにかくここでいいたいことは、古代以前の日本列島に宗教(アニミズム)なんか存在しなかったということ、そしてそれをもとにして天皇の起源のかたちを考えてみたい。 日本…

なやましさとくるおしさ・神道と天皇(24)

1 生きてあることは、なやましくくるおしいことだ。 私はあなたの奴隷だけれど、私の心はあなたの思う通りになんかならない……神に対してそういいたい気分がある。私は心だけの存在で、体の中身なんかぜんぶあなたにくれてやる……そういいたい気分もある。も…

たかがポルノ、されどポルノ・神道と天皇(23)

1 宗教がないと生きられない……。 宗教なんかなくても生きられる……。 そんな水掛け論をしていてもしょうがない。生きものは根源において生きられない存在であり、生きられなさを生きることが生きるいとなみになっている。生きられなさを抱きすくめるようにし…

終わりの始まり・神道と天皇(22)

1 東京では、ようやく桜の花が咲きそろってきた。 この時期になると、日本人はどうしてこんなにも桜の花が好きなのだろうといつも思わせられる。 森友学園問題は、終息しつつあるのだろうか。 証人喚問をする人もされる人も、総理大臣もその取り巻きの右翼…

天上の国でも花は咲いたか・神道と天皇(21)

1 本居宣長や折口信夫を崇め奉っている人や、それを研究対象にして飯を食っている人たちは、僕がここでこんなことをいうのは極めて不愉快で聞く耳を持たないだろうし、そんなのはただの「トンデモ説」だと一蹴してもいるのだろうが、彼らの思考や想像力がそ…

なるようになるさ、ということ・神道と天皇(20)

1 日本列島の住民は、ものごとのはじまりにおいて機が熟すまでの「過程=気配」を検証してゆく知性や感性に恵まれていて、欧米の科学者が日本人を研究チームの一員に加えたがる理由は、ひとつにそんなところにもあるのかもしれない。欧米人が見逃してしまい…