2013-01-01から1ヶ月間の記事一覧

神と生贄・「天皇の起源」4

1 もちろん、自殺してもいいというつもりはない。しかし、死にたいする親密さが人間存在の生きてあるかたちなのだ。死にたいする親密さがこの生を活性化させる、そういう問題は確かにある。 人間は、死にたいする親密さとともに、無防備のままこの世界と向…

ああ、お姉さん・「天皇の起源」3

1 猿の子供は、母親が次の子を産めば、母親から離れてひとまず群れの一員になる。 人間だって3歳くらいまでのことはほとんど忘れているのだから、猿だったらなおさらで、猿には、「母を慕う」というような感情はないにちがいない。 そしてネアンデルタール…

無防備な存在・「天皇の起源」2

1 このページでは、天皇が奈良盆地の外からやってきた征服者であるという立場はとらない。 天皇の起源が、そういう政治の問題だとは思わない。 もともと天皇は政治的存在ではないし、現在もそうだろう。 天皇が政治の実権を握っている時代もあったが、そう…

「天皇制の起源」1

1 歳をとるとなぜ時間が早く過ぎてゆくのかということは、誰もが考える。 子供の体は日々成長している。昨日までは背伸びしても届かなかったところに今日は届くようになっている。身体能力そのものも成長している。意識は、みずからの身体を物差しにして世…

進化について考える・「漂泊論B」73

1 前回の記事において僕がいいたかったことは、生き物は「死んでゆく」はたらきが生きるはたらきになっている、ということだ。 それだけがいいたかった、といってもいい。 この「死んでゆく」ということを、生物学的なパラダイムとしてもう少し考えてみるこ…

子孫を残す、という問題・「漂泊論B」72

生物の定義はエネルギーを消費することにある、と書いたのはまずかったのかもしれない。 すべての森羅万象はエネルギーを消費しながら成り立っている。 では「子孫を残す」ことを生き物というのか。 しかし、空気が固まって氷になり、氷が溶けて水になり、そ…

命をすり減らしながら進化してゆく・「漂泊論B」71

<はじめに> 御訪問、ありがとうございます。 僕は、ふつうに社会人生活をしていれば、定年を迎えてひと仕事すませた気分になれるような年まで生きてきてしまいました。それなのに、どこをどう間違ったのか、自他ともに人並みと認められるような生活とは、…

女どうしの連携・「漂泊論B」70

1 日本列島の歴史における国家の発生というメルクマールをひとまず大和朝廷の成立に置くとすれば、それ以前の弥生時代の奈良盆地に国家は存在しなかった、と考えることができる。つまりその集団は、共同体の制度や規範で運営されている集団ではなかった、と…

「憂き世」の伝統・「漂泊論B」69

1 日本列島においては、この世界をつくった神という概念などなく、神すらも世界の「なりゆき」で「現れ出る」ものだった。 少なくとも弥生時代以前に、神という概念はなかった。 大和朝廷成立以後に大陸から神という概念が入ってきて、「尊くありがたい」と…

神はこの世界をつくったか?「漂泊論B」68

1 日本人は、「やおよろずの神」などといいながら神という概念をもてあそんでいるだけで、神という概念を知っているわけではない。 古代人が天皇を神として祀り上げていたとしても、天皇がこの世界をつくったとは思っていなかった。 天皇はたんなる「神の形…

なりゆきの起源論・「漂泊論B」67

1 起源における巫女は処女の娘が選ばれた、というが、おそらくそれは後世につくられた制度であって、もともと日本列島には処女かどうかを問う文化などなかった。 セックスなどというものは、教えなくても少年と少女がどこかで勝手に覚えてやってしまうもの…

「美少女」の発見・「漂泊論B」66

1 人間なら誰だって、生まれてきて死んでゆくというみずからの生の与件について考えるだろう。 何はさておいても、そのことが気になる。というか、そのことに対する思いの上にわれわれのこの生が成り立っている。 言葉の起源とか人類拡散の起源とか国家の起…

舞うということ・「漂泊論B」65

1 弥生時代の奈良盆地を政治や経済の側面で語る歴史書はあっても、弥生時代の舞について語っている著作を僕は知らない。 それは、日本列島の住民の世界観や生命観の祖型について考えることである。 高校生のころ、和辻哲郎の「風土」という本を読んでひどく…

出会いのときめきと別れのかなしみ「漂泊論B」64

1 新年だから、ちょっとくらい不謹慎な書き出しにしても許されそうな気がする。 僕は、「ちぇっ」と呟いて道端にたばこをぽいと捨てるような若者は嫌いではない。 生きていれば、誰にだってやりきれなさやいたたまれなさはある。若者が、そういう思いで胸が…