2009-01-01から1年間の記事一覧

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」49

人間が二本の足で立って歩くということは、「無力」な存在になることである。 それが、直立二足歩行の起源である。 それは、攻撃することが困難な不安定な姿勢であると同時に、胸・腹・性器等の急所をさらして、防御においてもきわめて不利な姿勢である。 猿…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」48

人間の直立二足歩行の起源は、「立ったままでいる姿勢」を獲得したことにある。 「ものを手に持つため」とか「長い距離を歩くため」とか、そんなことはこの「姿勢」を獲得したことの「結果」であって、この「姿勢」を獲得したことの「契機=原因」ではない。…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」47

太宰治原作の「ヴィヨンの妻」という映画が話題になっているらしい。 どうしようもないだめ男の亭主を当たり前のように受け入れて明るく生きている女の話。 どうしようもなくだめだけどどこかに人間的な魅力があるとか、そんなことではない。人間とはどうし…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源(カムイ)」46

やまとことばの「熊(くま)」ということばは、「怖い」という感慨の表出が語源であろう。 アイヌ語では、「カムイ」という。 「カムイ」とは、その出現における圧倒的な存在感に対する畏怖を表出していることばである。 したがって、やまとことばの「くま」…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」45

このブログのコンセプトは、そのへんのバカギャルと同じレベルのことばと同じレベルの思考で、高級な学術用語をひけらかして何かがわかったつもりになっているインテリ連中に対して、おまえらの考えることはそのていどか、われわれのほうがずっと遠くまで考…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」44

人間と猿の思考は、どこで分かたれるのか。 猿は目の前にあるものを認識しているだけだが、人間はその向こうの見えないものを類推してゆくことができる。 まあ、大雑把にいえばそういうことになるのだそうな。 つまりそれが、「神話的思考」あるいは「呪術的…

祝福論「やまとことばの語源」・「神話の起源(ときめき)」43

起源としての神話は、共同体においても個人においても、「自己(アイデンティティ)」を確認し確立するための装置として生まれてきたのではない。 現代人は、そうした自己確認の装置として「神話」をイメージし、商品や芸術を生み出しているが、「起源として…

祝福論「やまとことばの語源」・「神話の起源」42

われわれの無意識(あるいは前意識)は、この世界をひとつの「混沌」としてとらえている。それを、上部意識における「意味作用」によって、われわれがふだん見ているような整合性を持ったかたちが与えられてゆく。「四角い」とか「丸い」とか「赤い」とか「…

祝福論「やまとことばの語源」・「神話の起源」41

道で、誰かと出会う。 「私」はときめく。 このとき、「私」が見ている他者の画像は、「私」の感性による解釈に染められていない。 このとき「私」は、その根源的な視覚がとらえた画像を、みずからの感性によって処理してゆくということをしていない。 根源…

閑話休題

深く嘆くものは、そう多くのことにときめかない。少ない対象に深くときめく。 好きな相手と一緒に暮らせるならあまり多くを望まない、という人は今の時代でもたくさんいるに違いない。 深く嘆くものは、深くときめいている。 深くときめくものは、深く嘆いて…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」40

現代では、「科学的な思考」というと、なんだかほめ言葉で、いっぽう「非科学的だ」とか「疑似科学だ」というときは、おおむねけなしている。 人類の歴史は「巨大な脳」を持ったことによって「自己意識」を肥大化させ、ことばを話すようになった……ひとまずこ…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」39

小林秀雄は、「古事記の研究をはじめた本居宣長が最初に直面した問題は、あの荒唐無稽で不合理極まりない話にどういう態度で臨むのか、ということだった」というようなことをいっている。 宣長はそこで、全部まるごと信じて受け止めることにした。そしてその…

祝福論(やまとことばの語源)「神話の起源」38

「認識の裂け目」というものがある。何がなんだかわからなくなる。心はそういう事態に陥って、驚いたりときめいたりおそれたりしている。 それを「超越性」という。 いったい、この世界とは、なんなのだ。「自分」とは、なんなのか。「自分」は存在するのか…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」37

先日、鯛の漁場であり瀬戸内の景勝地としても有名な鞆の浦という入り江の一部を埋め立てる工事認可差し止めの判決が下りたらしい。 この地の景観を愛する宮崎駿氏は「いい判決だ」と評価した。 地元は、工事推進派と反対派が二分されていたらしい。 推進派の…

閑話休題

今年の4月9日に、[Miki Hashimoto]というハンドルネームの人からとても丁寧なコメントををもらっていたことに今まで気づかずにいて、けっきょく返信のコメントをしないままになっていました。 もう見てもらってはいないだろうけど、ひとま…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」36

(承前) 「あの男は猿のようだ」というときの「猿」ということばは、猿そのものをさしており、「のようだ」ということばによって、この表現が比喩であることを表している。 それに対して「あの男は猿だ」というときの「猿」は、「猿そのもの」であるという…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」35

A…あの男は猿だ。 B…あの男は猿のようだ。 この二つの比喩表現でどちらが原始的かといえば、Aのほうらしい。 Aの表現を「暗喩(メタファー)」といい、Bは「直喩」という。 万葉集では、初期の歌にはAの表現が多く、後期になってBの「…のようだ」とい…

祝福論(やまとことばの語源)「神話の起源」34

「語り合う」ということそれ自体に、神話が生まれてくる契機をはらんでいる。 原初の文学は、「語り合う」あるいは「歌を交わす」という現場から生まれてきたのであって、才能ある文学者の個人的なイマジネーションから生まれてきたのではない。 イマジネー…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」33

このテーマを考えることもいいかげんもう締めくくりに入っていかなければならないのだが、なかなか着地点が見つからなくて行きはぐれています。 神話の主題は、共同体や個人の「自己確認」にある、という一般的な合意に異をとなえるところから書きはじめたの…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」32

信濃大門さんは、こういっておられた。 西洋の「憑依」と日本列島の「憑依」とは少し違う。日本列島では能動的に「神につく」のではなく、いわば受動的に「神がつく」すなわち「神がやどる」のだ、と。 「やどり木」ということばがある。神社の心柱は、神が…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」31

原始時代に迷信などなかった。 現代社会に暮らすわれわれがいかに迷信深い存在であるかということを、もっと自覚してもよいと思う。 科学が発達した社会で生きているからといって、われわれがそのまま科学的な思考の持ち主だとはかぎらない。 だいいち、科学…

祝福論(やまとことばの語源)「神話の起源」30

信濃大門さんから、「バイブルパワー」というブログのことを教えてもらった。 そこでは、主にキリスト教のことを語っているのだが、やまとことばや日本の宗教にも関心があるらしく、ときどきそんな記事も載せている。 で、信濃大門さんに教えてもらったのは…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」29

起源としての戦争が、「土地争い」とか「奴隷狩り」とかそんな経済的理由から起こってきたと考えているのはこの島国の歴史家だけで、それが純粋な「祝祭」であったということは、今やもう世界的な通説になりつつあるのだとか。 マヤ文明やインカ文明の遺跡か…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」28

「起源神話」をどう解釈すればいいのだろうか。 現在残っているものは、おおむねあとの時代になって、共同体の正当性を確保しようとする権力者の意図に沿って紡ぎ出されたものだろう。 古事記上巻の「天地(あめつち)のはじめ」の記述だって、世の歴史家は…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」27

戦争の起源についての蛇足を書いておきます。 人間は、連携する生きものである。 原初の、戦争という共同体間の「対立」は、ひとつの「連携」でもあった。 そのとき彼らは、「死の覚悟」を共有して戦っていた。 共同体の発生とともに、死が、解決不能の問題…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」26

現代社会において、大人たちは、何によって「連携」していっているのか。 お金によってか。 基本的には、まあそういうことだろう。 しかし、お金以外のところでの連携や信頼関係もある。 酒場などでは、お金なんかどうでもいい、ということがつながりになっ…

祝福論(やまとことば)の語源・「神話の起源」25

近ごろ、東京横浜間の湾岸に広がる京浜工業地帯を一種の観光スポットとして巡る小さなツアーが、都会の若者たちのあいだで静かなブームになっているらしい。 モノクロームのパイプや煙突などが無数にむき出しになって並ぶ工場の建物の景色に、彼らは「癒され…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」24

人は「自分」を守ろうとする。 懸命に守ろうとする。 もしもその人があなたを責めるとすれば、その人はそうやって「自分」を守ろうとしているのだ。 自分を守ることが習い性になっている人は、すぐに人を責めたがる。そうやって、懸命に自分を守っている。 …

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」23

大和朝廷は、遠い昔に九州から奈良盆地に東征してきた神武天皇がうちたてた……という古事記の話はあくまで伝説=神話であって、史実ではないはずです。 人々は、連携している各共同体の外の第三の地を意識していた。その第三の地を起源として共有してゆくこと…

祝福論(やまとことばの語源)・「神話の起源」22

奈良盆地の人々には、ここは旅路の果てとしての最終的な地である、という感慨があった。だから、神武天皇が九州から東征してきてうち建てた都だ、という神話をつくった。 「やまと」の「やま」は、「遠いところにたどり着く」という意味。「と」は、「とまる…