2016-01-01から1年間の記事一覧

どうでもいいや・ネアンデルタール人論223

1 今どきは、自意識過剰の人間がたくさんいて、うんざりしてしまう。 というか、年をとると他人の自意識過剰のさまに敏感になってくるらしいのだが、若いときからすでに敏感な人は、そうやってこの先もずっとひといちばい傷ついたり幻滅したりして生きてい…

理想の社会は存在するか・ネアンデルタール人論222

1 原始人であるネアンデルタール人が、氷河期の北ヨーロッパという苛酷な環境に、体力や意志の力だけで住み着いてゆけるはずがない。それを可能にしたのは、誰もが他愛なくときめき合いながら心も体も温め合ってゆくという、その関係性の生態にあった。 か…

メソポタミアの伝統・ネアンデルタール人論221

1 人類のサディズムはどのようにして本格化ししてきたのだろうかと考えるとき、どうしてもメソポタミア文明発祥の地であるアラブ世界のことが気になる。現在のイスラム国をはじめとして、彼らのあのサディズムはいったいなんなのだろう、と思ってしまう。そ…

他愛ないときめき・ネアンデルタール人論220

1 文明社会にうごめいているサディズムというのは、ほんとにやっかいだと思う。それが人間性の本質だというわけではないはずなのに、社会の仕組みによってしらずしらず誰の中にも培養されてしまっている。 しかし、誰もが同じだけ持っているというわけでは…

サディストは感動しない・ネアンデルタール人論219

1 このところネアンデルタール人とは何の関係もないことばかり書いているように思われそうだが、人類史における「文明の発祥以前と以後」という問題はあるはずで、その断絶と連続性を検証することは人間性の普遍について考えることになるのではないだろうか…

サディズムという能動性、あるいは欲望・ネアンデルタール人論218

1 不遜なことをいわせていただけるなら、「ゆるーい幸せ」に執着して正義ぶった大人ほどたちの悪い生きものもいない。正義ぶった人格者なんか、みんなサディストだ。人はかく生きねばならないとか、人の世はかくあらねばないと主張することが、そもそもサデ…

ゆるーい幸せなんかいらない・ネアンデルタール人論217

1 死んでゆく人は、美しく荘厳だ。 西洋人による十字架にかけられたキリストの像を拝むということだって、つまるところは、死んでゆく人に対する人類普遍の感慨の上に成り立っているのかもしれない。 息をするとか飯を食うとか体を動かすとか、この生のいと…

死んでゆく人は美しい・ネアンデルタール人論216

1 人の心は、死んでゆく人から癒され、死んでゆく人にときめいてゆくことができる。文明の未発達な原始人の身では生きられるはずもないような氷河期の極北の地を生きたネアンデルタール人は、この心模様を極限まで体験した人々だった。彼らにとって死はひと…

言葉の輝き・ネアンデルタール人論215

1 ここではひとまず生命の起源のところまでさかのぼりながら「進化論」を考えているわけだが、それは現代を生きるわれわれの、飯を食ったり服を着たりおしゃべりをしたり何かに感動してときめいたりセックスをしたり生きて死んでいったりすることの問題でも…

出たとこ勝負の進化・ネアンデルタール人論214

1 たとえば、薄いゴム手袋をして水気のものに障れば、手の皮膚が濡れたように感じる。「皮膚感覚」とはそのようなことで、そのときゴム手袋が「皮膚」になっている。だから、コンドームをはめてもちゃんと挿入している心地が得られる。まあ、それではなんと…

不幸を受け入れる・ネアンデルタール人論213

1 正義ぶった生命賛歌なんか、やめてくれよ、と思う。いまどきは、そういう思考停止に居直った市民正義が充満している。 うんざりなんだよ。あなたたちの思考なんてそのていどか、と思ってしまう。 もっと深く考えよというのではない。なぜもっと無邪気に素…

生きるなんてむなしいことだ・ネアンデルタール人論212

1 ろくな文明を持たない原始人であるネアンデルタール人が命を削るようにして氷河期の北ヨーロッパという苛酷な地に住み着いてゆくなんて、なんと無謀でむなしい行為であることか。ストリンガーをはじめとするアホな集団的置換説の研究者たちにいいたい。あ…

命のはたらき・ネアンデルタール人論211

1 「進化論」を考えることは、「命のはたらき」について考えることだ。 生きものの進化は「皮膚感覚」とともに起こってきた。 つまり生きものの「身体感覚」は、身体の「輪郭=外縁」としての「皮膚」に宿っているのであって、身体の中身としての「肉体」に…

皮膚感覚の問題・ネアンデルタール人論210

1 人間中心主義でいうのではないが、直立二足歩行の開始以来、人類の脳のはたらきは驚異的に進化発展してきた。それはまあ、そうに違いない。では、猿にはないそうした人の心の動きのダイナミズムはどこにあるのかといえば、生き延びることすなわち自我の安…

別れのかなしみと遠いあこがれ・ネアンデルタール人論・209

1 人類史において最初に「埋葬」という葬送儀礼をはじめたのは、おそらくネアンデルタール人だった。 ネアンデルタール人の洞窟からは、たくさんの彼らの遺骨が出土する。それは、彼らが死者を洞窟の土の下に埋めていたことを意味するのであって、ストリン…

悩むなんてくだらない・ネアンデルタール人論208

僕は自分の中の自意識にいつも四苦八苦していて、けっしてイノセントな人間ではないが、他者のイノセントに対するときめきなら持っている。無防備で他愛ない他者のイノセントに付け込んで支配しようとしたりたぶらかそうとしたりするような趣味はない。 イノ…

イノセント・ネアンデルタール人論207

1 「イノセント(純粋無垢)」という言葉は、ネアンデルタール人のためにあるようなものだ、という気がする。 人類は、地球の隅々まで拡散してゆくという艱難辛苦の旅の果てに、とうとうその心模様にたどり着いた。 「イノセント」すなわち「他愛ないときめ…

世界は輝いているか・ネアンデルタール人論206

1 生涯学習として学問をしようと思い立ち、まずパソコンの使い方を覚えるところからはじめようとする中高年の人たちがいる。パソコンの使い方に習熟すれば学問ができると思っているらしい。 そんなものじゃない。 そのためには基礎的な教養はもちろんのこと…

「快適な暮らし」など望まない・ネアンデルタール人論205

1 万物の霊長などといっても、人はもともと心も体も脆弱な存在であり、直立二足歩行の起源以来、どれほど知能や文化を進化発展させてきたにせよ、その本質は今なお変わっていない。原始人だろうと現代人だろうと、人間なんてつまりはそういう「生きられない…

倫理や道徳なんか知らない・ネアンデルタール人論204

1 都市論はまだまだ書きたいことがあるのだけれど、いつまでたってもまとまりがつかないし、きりがないからもう終わりにする。 そのうち、あらためて考え直してみたい。 とはいえ、ネアンデルタール人論とはつまるところ都市論かもしれない、とも思う。 人…

都市の起源(その五十二)・ネアンデルタール人論203

その五十二・なりゆきまかせ……都市論のまとめ 1 人類史において、「村」が発展して「都市」になったのではない。 村はいつまでたっても村であり、都市は、最初から都市的な性格を持って発生してきた。 たとえば、日本史で最初の都市集落を弥生時代の奈良盆…

都市の起源(その五十一)・ネアンデルタール人論202

その五十一・もう死んでもいい 1 僕はずっと、人の心が「ときめく」とはどういうことかと考えている。そのことを基本にして、人類の歴史についてあれこれ思いめぐらしている。 他愛ないものだ。こんなことでは、哲学にも思想にもなりはしない。 きちんと資…

都市の起源(その五十)・ネアンデルタール人論201

その五十・人の心は、この生からはぐれて途方に暮れている 1 ここで考えているネアンデルタール人の問題とは、つまるところ都市論であるのかもしれない、と思えてきた。 ネアンデルタール人の時代に都市があったはずもないが、彼らはすでに都市的なメンタリ…

都市の起源(その四十九)・ネアンデルタール人論200

その四十九・えらそげに干渉してこないでくれ 1 人類史最初の「王」はおそらく、民衆から祀り上げられた受動的な存在だった。勝手に支配者として登場してくるということは、人間性の自然としてありえない。われわれの友人関係だって、自分勝手なエゴイスト…

都市の起源(その四十八)・ネアンデルタール人論199

その四十七・この生は「今ここ」にしかない 1 ネアンデルタール人の社会に「家族」という関係はなかった。生まれた直後の乳児との母子関係があっただけで、それ以後はもう集団のみんなで子供を育てていた。 基本的に、ひとりひとりが孤立して存在している社…

都市の起源(その四十七)・ネアンデルタール人論198

その四十七・それは、「神のしわざ(=支配)」か? 1 ネアンデルタール人の集団がつねに離合集散を繰り返していたということは、彼らには「監視する」という制度的なメンタリティすなわち支配欲が希薄だったことを意味する。 神の本能は人間を監視すること…

都市の起源(その四十六)・ネアンデルタール人論197

その四十六・人生はなりゆきまかせだ、いっぱい後悔して泣けばいい 1 人と人の関係の基礎は、二本の足で立って向き合っていることにある。 くっついて支え合っているのではなく、離れたまま、ともにひとりで立っている。ひとりで立つ姿勢を安定させるために…

都市の起源(その四十五)・ネアンデルタール人論196

その四十五・滅びるということ、別れのかなしみ 1 生きることの意味や価値がどうとかこうとか、多くの大人たちがそんなことを語りたがり、若者たちはそれを探しあぐねて悶々としていたりする。しかしそんなことを問題にすること自体、人は生きようとする衝…

都市の起源(その四十四)・ネアンデルタール人論195

その四十四・生き延びるためにがんばることの、なんと野暮ったいことか 1 生きものは生きようとする衝動を本能として持っている……だなんて、どうしてそんな前提が成り立つのか、よくわからない。 「生きる」という概念を意識しているのは人間だけで、ほかの…

都市の起源(その四十三)・ネアンデルタール人論194

その四十三・好きにならずにいられない 1 人類史の発展の果てに「都市」が生まれてきたのではない。 直立二足歩行を起源とする人類史は、本質的には最初から都市的な性格の集団だったのだ。 都市生活における人と人の関係の作法の基礎は、たがいに「避けが…