2012-01-01から1年間の記事一覧

途方に暮れている・「漂泊論B」3

1・「わからない」と途方に暮れている 人間の心の中の原初的な混沌、というとき、それは「凶悪でたけだけしい心」ではなく、「びくびくして途方に暮れている心」を指すのであり、すなわち「逃げ隠れする心」こそが人間の自然であり原初的な心のかたちなのだ…

原初的な混沌・「漂泊論B」2

1・人間は、弱い猿だった 一般的には、人間の心を語るときに「原初的な混沌」というと、何か凶悪でたけだけしい気持ちのことのようにいわれることも多いが、そういうことではないと思う。 一般的には、二本の足で立った瞬間から猿よりも大きな体と発達した…

やまとことばの「まつり」・「漂泊論B」1

1・第二章の前書き 縄文時代から古代にかけての歴史を通して、日本的な心性の源流を考えてみたい。 日本人論はすでに語り尽くされている観があるが、それでもまだわれわれはその答えを探しあぐねている。 日本人とは、日本人とは何かと問い続ける民族である…

人間は未来の危機を思わない・「漂泊論」91

<はじめに> ブログランキングに登録しました。 どちらかというと世間に背を向けたようなブログだからそんな場に参加する柄でもないのだけれど、だからこそたとえ少数でも「あなた」にこの言葉を届けたいという思いもそれなりに切実です。 このブログは直立…

祭りの起源・「漂泊論」90

1・人が集まってくる場所 この「漂泊論」というテーマは、日本文化の源流としての縄文人や古代人の心性について考えたくてはじめたのだが、その序論の、旅についての普遍的なことを考えるのに、こんなにも長く書いてきてしまった。 序論ばかり長くて本論や…

原始人の生きがい「漂泊論」89

1・歴史の目的などというものはない 原始人は何をよりどころにして生きていたのか? 人間の本性というか人間の自然というか、そういうことを考える上で「目的」とか「欲望」という言葉は、どうもいまいち馴染めない。 現代人は、人間は目的を追求する生き物…

原始人の小さな旅「漂泊論」88

1・自己の不在を生きる 人と一緒にいて楽しければ、別れたくなくなってしまう。 われわれは、楽しいときや生きた心地がするとき、未来の時間を思わない。「いまここ」にとどまろうとする。生き延びようとなんかしない。 人間は、生き延びようとする衝動など…

そんなにもちやほやされたいか・「漂泊論」87

1・死は、「いまここ」に消えてゆくことである 前回、人間は人間の自然において未来を思わない生き物である、と書いた。 だからわれわれは、人と一緒にいて楽しければ、別れたくなくなってしまう。 人間は、かならずしも未来を思うことを優先して生きている…

言葉は伝達のための道具か・「漂泊論」86

1・コミュニケーションという制度性 この社会に立ちはだかる壁は厚い。 僕にとっては、言葉が伝達のための道具として生まれてきたのではないことは至極あたりまえのことのように思えるのだが、世の中の多くの人々は、逆に伝達の道具として生まれてきたと信…

世の中に踊らされている・「漂泊論」85

1・そんなことじゃないんだよ 僕が「生きてあることのいたたまれなさ」といったら、「そのいたまれなさは死を思いこの生が有限であることを思うところからきている」という答えがある人から返ってきた。 まったく、アホじゃないかと思う。 おまえらの生は、…

命をなだめる・「漂泊論」84

1・人間は、「キャンプ」をする生き物である サッカースタジアムとかコンサートとか、街の雑踏とか市場(バザール)とかお祭りとか、例を上げたらきりがないが、人間は、どこからともなく人が集まってきてひとつの集団になる、という生態を持っている。 こ…

衣食住より大切なもの・「漂泊論」83

1・ネアンデルタール人のチームプレー 人間の生態を衣食住の問題で考えると誤る。 人間にとって第一義的な問題は、衣食住を満たすことにあるのではない。 「あなたと一緒にこの世界に生きてある」というそのことにカタルシスがあるかどうかということこそ、…

衣食住の問題じゃない・漂泊論82

1・原始時代の旅人 旅に出ることは、衣食住がままならなくなることだ。 古代や原始時代の旅は、確実にそういうことだった。彼らにとって旅とは、衣食住を失う(あるいは捨てる)ことだった。 いまどきの人類学の研究者たちは、原始時代のアフリカのホモ・サ…

無邪気な心・「漂泊論」81

1・酔っぱらうということ 酒場談義などをはたで聞いていると、人間のことも世の中のこともすでにぜんぶわかっているようないい方をする大人がよくいる。 大人なんか、たいていがそういう人種だ。 ふだんは謙虚な人でも、酔っぱらってくると、とたんにわかっ…

旅の語源・「漂泊論」80

1・言葉は、どのようにして生まれてきたのか このへんで、「旅(たび)」というやまとことばの語源を確認しておきたい。 古いやまとことばは、ほとんどが、「意味」としてではなく「感慨」の表出として成り立っている。だから、その語源を問うことは、古代…

戦後世代の限界・「漂泊論」79

1・アメリカがお手本だった 「人間の自然」、あるいは「ヒトのネイチャー」とはなんだろうと思う。 戦後日本は、「上手に生きれば幸せになれる」と信じて復興の歩みをはじめた。 そのように目的意識で方法論に執着してゆくことが近代合理主義のスローガンで…

ネアンデルタール人と拡散の衝動・「漂泊論」78

1・とりあえず人類は北の果てまで拡散していった。 アフリカ中央部から拡散していった原初の人類が氷河期で地続きになったドーバー海峡を渡っていったのは、50万年前ころだといわれている。 彼らが、ネアンデルタール人の祖先になった。 人類が最初にアフ…

近代の旅とエロスの不在・「漂泊論」77

<はじめに> このページを開いていただき、ありがとうございます。 ブログランキングに登録しました。 で、一日一回クリックのお願いのための口上を書かせていただきます。 なんとしても人におもしろく読んでもらえるページにしたい。 とはいえ、あまりポピ…

目的なんかない・「漂泊論」76

<はじめに> このページをクリックしていただき、ありがとうございます。 このたびブログランキングに登録し、そこで一日一回のクリックをお願いするからには何か口上を差し出さねば、と思い立って書いています。 とはいうものの、お願いできるような柄では…

文化は欲情をうながすか・「漂泊論」75

1・人はなぜ欲情するのか。 動物はただ生理的に発情するだけだが人間は文化によって欲情する、などとよくいわれるが、はたしてそうだろうか。 人間の男は、文化によって勃起しているのだろうか。 人間の男だって、生理的に勃起しているだけだろう。 文化は…

エロスとしての旅の衝動・「漂泊論」74

1・旅は、一種の性的な衝動である 人類史における旅の起源は、女が、サバンナを横切って隣の森の集団に身を寄せていったことにある。 サバンナを横切ることが原初の旅だった。 この生態は、直立二足歩行開始直後の猿人の時代からはじまっていたらしい。彼ら…

生きてあることのやりきれなさ・「漂泊論」73

1・お祭りにしてしまわないと生きていられない 人間の歴史は、どうしてこんなところに来てしまったのだろう。 正しく進化してきた、といえるのだろうか。これが、人間の歴史の必然的な帰結だろうか。 人間は、自分たちの望むところにたどり着いたのだろうか…

進化の究極

まだ少しショッピングモールについて考えたいことがあります。 1・未来はどっちだ? 映画の未来都市のCGなどでは、超高層ビルがひしめき合って、いったいここにはどれだけの人が住んでいるのだろうと思わせられるような途方もない規模に描かれていること…

都市文化の成熟の行方

1・通過儀礼としてのショッピングモール もう少し、ショッピングモールにこだわります。 今や大型ショッピングモールは、新興地の町はずれの景色のひとつになりつつある。 もちろん東京という大都市にもある。羽田空港、お台場、東京スカイツリー、等々に併…

ショッピングモール再考

ショッピングモール再考*1346344077*[漂泊論] 1・人間はもともと、人と人のつながりなんか求めていない 現代人はなぜ、ショッピングモールという空間に引き寄せられてしまうのだろうか。 ほどよくおしゃれで便利で都会的な買い物ができる。 こういうサービ…

サバンナの旅・「漂泊論」72

サバンナの旅*1346296389*[漂泊論]72 1・サバンナが暮らしの場であったのではない 人間は隠れようとする生き物であり、隠されてあることに気づく生き物である。日本文化の源流だって、ここにある。 まあ日本人だけじゃなく、すべての人間がこのようなかた…

隠されてあるものの発見の起源・漂泊論71

隠されてあるものの発見の起源*1346296591*[漂泊論]71 1・服の下には裸が隠されている 夏が終わろうとしている。 秋が近づいてきている。 われわれはこの残暑の中にそうした気配が隠されているのを感じる。 隠されているものを感じるのが、人の心である。…

閑話休題・ショッピングモールの栄光

1・郊外のショッピングモールはディズニーランドみたいだ 先日、17歳の女子高生が、ショッピングモールのトイレでお産した赤ん坊をフードコートの隅にこっそり置き去りにしてきた、という事件が起きている。見つけられたとき、赤ん坊はすでに死んでいた。…

「漂泊論」70・女の孤立性

1・旅の起源は女がつくった 原初の人類は、直立二足歩行をはじめたばかりの「猿人」の段階のころからすでに、群れどうしで女を交換するという習性を持っていたらしい。 そのころ人類は、サバンナの中に点在する小さな森の中で暮らしており、群れと群れは、…

「漂泊論」69・人間存在の暗さ

レイアウトを変えてみました。それと、今まで書いた記事をカテゴリーごとに分類して表示し、すぐ検索できるようにもしたいのだけれど、まだうまくできません。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 1・原因がわかりたいのではない 人間はなぜ、「なぜ?」と問う…