2012-01-01から1年間の記事一覧

祭りと神の関係の嘘・「漂泊論B」33

1 <承前> やまとことばの「なる」には、作為をあらわす意味はない。 作為的な意図がある場合は「なす」という。古代人は、そういう違いは分けておかないと落ち着きが悪かったらしい。 「な」は「なれる」「なじむ」の「な」、「親密」の語義。親密な感慨…

神を見たか?・「漂泊論B」32

1 「神」とか「霊魂」とか、いったん信じてしまったらもう引き返せないものらしい。 信じている人に「信じるな」といっても、無理な話である。人の心のはたらきの普遍的なしくみとして、いったん信じたら、どんどん信じてゆくようにできているらしい。 ライ…

霊魂は存在するか?・「漂泊論B」31

1 「ルール」という言葉につまずいてしまった。 もう少しこのことにこだわってみたい。 ルールとは、選択肢を奪われて不自由な状況に立たされる装置のこと。 しかし命は、その不自由の中でこそいきいきとはたらく。 この生は、先験的に不自由の中に投げ入れ…

生きることは空しいか・「漂泊論B」30

1 <承前> 何をしても空しい、という人がいる。 とくに、歳をとって世の中の動きからリタイアした人に多い。 そりゃあそうだろう、この世に「しなければならない」ことなど何もない。 「しなければならない」ことをして生きてきた人がそのことに気づいてし…

ルールの起源・「漂泊論B」29

1 それは、自由とは何か、と問うことでもある。 しかし人間は、もともとそれほど自由な存在ではない。 原初の人類が二本の足で立ち上がることは、とても不安定で不自由な姿勢であったはずである。動きは鈍く不自由になるし、胸・腹・性器等の急所を外にさら…

答えのない問い・「漂泊論B」28

1 三つ子のたましい百まで、というが、たしかに人の考え方や行動様式はそうかんたんには変わらない。 それは、そういうことが「過去の記憶(データ)」の上につくられているからだろう。 過去はもう変更できないのと同じくらいその人の性根も変わらない。 …

人間と猿を分けるもの・「漂泊論B」27

<はじめに> ブログランキングに登録しました。 どちらかというと世間に背を向けたようなブログだからそんな場に参加する柄でもないのだけれど、だからこそたとえ少数でも「あなた」にこの言葉を届けたいという思いもそれなりに切実です。 このブログは直立…

それどころじゃない・「漂泊論B」26

1 意識は絶対的に身体の危機を回避しようとする。 だから、苦痛という意識のはたらきが起きてくる。苦痛がなければ、そのまますんなり死んでしまえる。 では人間は生きようとしているのかといえば、それとこれとはまた別の問題だろう。 人間なんか何か嫌な…

視覚画像の起源・「漂泊論B」25

1 毎朝庭にやってくる鳥がいる。 家のものはそれを死者の生まれ変わりかと思い、水や餌を与えて、ときには話しかけたりする。 死んだ妻、死んだ夫、死んだ子供、死んだ祖父や祖母……。 こういうことを、その人の心やさしさとか、人間と自然のかかわりの原点…

生命の起源・「漂泊論B」24

1 人間は避けがたく「死にたい」という願いを持ってしまう存在であり、命なんか尊くもなんともない。人々が尊いと思いたがっているだけの話であり、ひとまずそういうことにして共同体の結束をつくっている。だからそう思えない人は、その結束から排除され置…

死ねないと絶望している・「漂泊論B」23

1 人間は「死にたい」と願いつつ「死ねない」と絶望している存在である……これが、人類の歴史を考える上でのわれわれの前提である。このことは、どうしてもいいたい。何度でもいいたい。 猿であった原初の人類が二本の足で立ち上がったのはそういう資質を持…

死にたいと思っている・「漂泊論B」22

1 「死にたい」と思ってもかまわない。それこそが人間の自然なのだ。 「死にたい」という思いを手放すべきではない。 「死にたい」と思いつつ「死ねない」と絶望しているのが人間なのだ。人類の歴史はそのようにして動いてきたのであり、そこにこそ人間であ…

自殺できないわけ・「漂泊論B」21

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原初の生命観・「漂泊論B」20

1・人は母子関係から生きはじめる 哲学者の中島義道氏は「子供のころは死ぬのが怖くてたまらなかったから死のことばかり考えていた」といっておられるのだが、子供が死ぬことを怖がるというのはよくわからない心の動きだ。 中島氏にとっては、死ぬのが怖く…

幽体離脱と霊魂・「漂泊論B」19

1・故郷に帰ることは消えてなくなることだ 吸い込まれるような秋の青空を見上げればいっそう嘆きが深くなる、と、ある人がいった。 それは、なんとなくわかるような気がするわけですよ。 それは、生きてあることのカタルシスの極みであり、このままこの世か…

雲になる・「漂泊論B」18

1・「安定・秩序」に潜り込んでゆこうとする制度性 赤ん坊には、第三者を排除しようとする制度的な「自分という意識」は希薄だろう。 「制度的な」とは、お母さんとの1対1の関係ではなく、集団的な三角関係の意識である。 この社会の制度性は、三角関係の…

じたばたする・「漂泊論B」17

1・それは、現代社会の制度性にすぎない 現代人は、生きることの「目的」とか「意義」のようなものを探している。 そんなものどうでもいいじゃないかと思うのだけれど、誰もがどこかしらで知らず知らずそういう心の動き方をしている。 生きることの「目的」…

原始社会に「霊魂」という概念はなかった・「漂泊論B」16 

1・原始時代の場合 現在の人間社会は、三角関係の上に成り立っている。 この関係を上手に生きることができる人間が出世をする。 われわれは、先験的に三角関係の中に置かれている。 2対1になって第三者を排除してゆくという関係。そうやって、人と人の結…

「生き延びる」だなんて・「漂泊論B」15

1・「生き延びる」だなんて、どうしてそんな卑しい物言いを平気でするのか 「霊魂」などというものは人間の心がつくりだしたイメージというか概念にすぎない、と頭でわかっていても、われわれはどこかしらでその存在を信じている。 「どこかしら」どころか…

幽霊を見たか・「漂泊論B」14

1・ここで死んでもかまわないと覚悟すること 内田樹先生、「幸せになりたい」といっても「生き延びたい」といっても同じなのですよ。ほんとにあなたは、どうしようもない俗物だなあ。 どちらも、日本列島の伝統の無常感にはそぐわない。 むしろ「生き延びた…

無常観という激情・「漂泊論B」13

1・「生き延びる」なんてどうでもいいことだ われわれは人間であると同時に、日本人でもある。 日本人であるとは、どういうことだろうか。 日本人であることの長所と短所、というような問題の立て方はしたくない。長所は短所でもあるし、短所は長所でもある…

人類の未来など語ってくれるな・「漂泊論B」12

1・コミュニケーションという名のサディズム 世の中はこれからどのように動いてゆくのだろう、と思う。 しかし、どうならなければならないか、というような議論にはあまり興味がない。 幸せになっても不幸になってもいいのだ。 この世の中にはいろんな人が…

コピペして記憶する脳・「漂泊論B」11

1・現代の市民社会は、人類の歴史の達成といえるか <承前> 迷信=superstition 迷信といえば、何だって迷信だ。 われわれの意識そのものがひとつの迷信かもしれない。 この世界、この宇宙がほんとうに存在するものかどうかなんてわからない。…

迷信「漂泊論B」10

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霊魂の起源・「漂泊論B」9

ふまれても消えぬ霊魂の憎らしさ(鬼鬼) やせがまんしてさかさまにおちてゆく(虫虫) うたかたの歌唄ううたたねの歌唄い(魚魚) 戻り道戻らぬ犬の影ひとつ(月月) 1・「霊魂」の歴史は、それほど古くはない 人類はどこでどのようにして「霊魂」という概…

ノーベル賞雑感・死者との対話

このごろ「霊魂」という言葉がとても気になっている。 あまり好きな言葉ではない。 ノーベル賞の山中教授は、こういった。 「自分はまだ研究の成果を実現していない。死ぬまでにそれを実現したら、あの世で父に報告できるかもしれない」、と。 つまりこの人…

「鬼」の文化・「漂泊論B」7

昼寝する眉に来世が止まりおり(犬犬) ああアホくさいわが人生、鬼に笑われるぞ……蛇足 1・人間は鬼の心を持っているか 日本列島の伝統文化といっても、「もののあはれ」や「わび・さび」だけではすまない。 「スサノオ」や「ヤマトタケル」のような「荒ぶ…

縄文人の死生観・「漂泊論B」6

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死に対する親密さの文化・「漂泊論B」5

1・大切なのは「生き延びる」ことではない けっきょく人間には、食い物よりも大事なものがある。 人と人の関係がうまくいかなければ、われわれは生きてゆけない。 われわれは、人と人の関係をよりどころにして生きている。人に対するときめきが人間を生かし…

縄文時代の旅・「漂泊論B」4

1・日本列島における山歩きの伝統 縄文時代のことを少し書いておこうと思う。 縄文時代について考えることは、人間はなぜ旅をするかというテーマと向き合うことでもある。 考古学の資料によれば、縄文人の男の多くは足の骨が変形してしまっていたのだとか。…