2017-01-01から1年間の記事一覧

「翁」は神の化身か?・神道と天皇(64)

1 中国には「老師」という言葉があり、日本列島の能では「翁」は神の化身であるという考え方もあり、老人は若者や子供よりも人間として優れた存在であるというようなことをいいたがる人もよくいるわけだが、その一方で日本列島の民衆文化においては「老いて…

したたかさと他愛なさ・神道と天皇(63)

1 そりゃあ、欧米人の思考や行動ががどんなにえげつないかということは、彼らの国家外交の権謀術数のあれこれで、われわれは明治維新の不平等通商条約以来現在までいやというほど思い知らされている。 彼らにとって裏の裏の二枚舌三枚舌なんか当たり前のこ…

どこにも行けない・神道と天皇(62)

1 縄文時代の文化習俗は、女の知性や感性がリードして成り立っていた。 死を怖れない文化は、女がリードする社会でなければ育たない。 一般的には男よりも女のほうが死を怖れない存在だということは、誰しも認めるところだろう。 人類の歴史は、「いつ死ん…

天才や英雄が歴史をつくるのではない・神道と天皇(61)

1 西部邁という人は、現在の右翼というか保守の論壇においては結構人気があるのだろうが、その一方で、上から目線で大衆をなじることばかりしているから不愉快だ、というような評価もあるらしい。何様だ、ということだろうか。この人もまあ、自分を見せびら…

女の時代・神道と天皇(60)

1 縄文時代は、女がリードする社会であり文化だった。 また、広い平地のほとんどは湿原であったために、山の文化でもあった。 山間地には多くの女子供だけの小集落が点在し、男たちは小集団で山道を歩きながらその集落を訪ね廻る旅をしていた。 四国巡礼の…

巡礼にご報謝・神道と天皇(59)

1 生きてあることのかなしみを知っているものこそ、より深く豊かにときめいてゆくことができる。したがって、そういう真に人間的な知性や感性としての心の動きは、訳知り顔の凡庸で通俗的な大人なんかよりも女子供のほうがずっと深く豊かにそなえている。 …

なんだか嘘っぽい・神道と天皇(58)

1 神道の本質や日本列島の伝統的な精神風土を語るのに三島由紀夫や折口信夫のいうことを引き合いに出されても困る。彼らは一種の天才かもしれないが、ほとんど信用できない。 この二人には、知識に対するものすごい収集癖があった。彼らの思想や美意識それ…

騒々しい精神・神道と天皇(57)

1 たとえば、彼の信奉者には申し訳ないけど、三島由紀夫のこういう言い方は、個人的にはほんとうにむかむかする。腹の底からむかむかする。あんな頭でっかちな自意識過剰の人間に「日本的な精神とは何か」という問題を語られたくはない、と思ったりする。 …

女にはかなわないということ・神道と天皇(56)

1 起源としての天皇は、女だった。 そうとしか考えられない。 縄文時代以来の考古学的事実や伝統的なこの国の精神風土を検証してゆけば、どうしてもそういう結論に導かれてしまう。 「武士道」とか「大和魂」などとかっこつけていっても、しょせんは「女の…

女の覚悟・神道と天皇(55)

1 起源としての天皇は女だった、といってしまうと、多くの歴史家にとって、その考えが右翼的であれ左翼的であれ、あまり都合がよくないらしい。 もしも天皇が奈良盆地で自然発生してきた存在であるのなら、その歴史に最初から「万世一系」とか「男系相続」…

女の本能・神道と天皇(54)

1 「いつ死んでもいい」ということは、「死にたい」ということとは違う。その覚悟に、「死にたい」という欲望はない。 言わずもがなのあたりまえのことだが、人はいつ死ぬかわからない存在なのだから、いつ死んでもいいという覚悟で生きてゆくしかない。 と…

人の心から生きてあることの嘆きは消えない・神道と天皇(53)

1 神道の「かみ」は、「神(ゴッド)」ではない。それは、宗教ではない。古代の民衆の「かみ」に対する想いは、宗教に対する「拒否反応」から生まれてきた。宗教を拒否しつつ受け入れてゆく、そういう心の作法とともに「かみ」という言葉というか概念が生ま…

それは神のしわざか?・神道と天皇(52)

1 神道における「かみ」はあくまで「非存在」の対象であり、この世界をつくったのでも支配しているのでもない。 自然の不思議な現象や人生の運命のことを「神のしわざである」などといったりするが、それは神のことをすでに知っているからであり、そういう…

権力者の心と民衆の心・神道と天皇(51)

1 『古事記』は、「神」の系譜の物語である。 そしてその当時の貴族たちの系譜が、そのまま「かみ」の系譜に当てはめて記されてある。 今となっては、天武天皇が『古事記』を起草しようと発案したのかどうかということはわからない。それは、天皇の出自のこ…

おみくじ考・神道と天皇(50)

1 仏教は疫病を鎮めるための呪術として輸入された、と歴史文書には書かれてあるらしい。そのとき既成の神道と新規参入の仏教が呪術力を競ったのだとか。ばかばかしい。そのころの民衆は呪術などというものは知らなかったし、呪術としての神道など存在してい…

宗教は人を俗物にする・神道と天皇(49)

1 民主主義とは、いったいなんだろう。 猫も杓子も政治がどうたらこうたらと大騒ぎして語っているが、政治がそれほど立派なことだとは思わないし、国を背負って国の将来を決定する資格や権利や能力がいったい誰にあるのかとも思う。彼らは、権力が欲しいの…

幽体離脱は超常現象か?・神道と天皇(48)

1 あなたは「国」というものを信じますか? 右翼であれ左翼であれ、「よい国にしなければならない」というとき、自分の存在理由は「国」の上に成り立っている、と信じられている。 全共闘運動に熱中していった団塊世代は、「国」というものを信じていた。そ…

言挙げしない・神道と天皇(47)

1 仏教における神は、仏に帰依していった存在であり、この世界を支配する存在ではない。つまりそのとき人々は、支配する存在(=仏)に願い事をするのではなく、「帰依する」という心映えに対する親密感を共有しながら「神」を祀り上げていった、ということ…

受難(災厄)を受け入れるということ・神道と天皇(46)

1 日本列島の神は、仏教伝来以降に生まれてきた。 古事記の神々の名の多くがなぜあんなにも長ったらしく説明的であるかということだって、名付けられてまだ間がないことを意味している。古くから伝えられてきたのであればもっと簡略化した名になっているは…

宗教は死を怖がらせる装置である・神道と天皇(45)

1 このレポートを、「仏教伝来以前の日本列島に宗教は存在しなかった」という仮説から書きはじめることは、それなりに実験的で危ない試みかもしれないが、僕は大まじめでそう確信している。 縄文時代や弥生時代の社会が原始宗教(アニミズム)の上に成り立…

生きられなさを生きる覚悟・神道と天皇(44)

1 ここでは、「日本」とか「日本人」という言葉はなるべく使わないようにしている。べつに右翼でもないからそんな言葉に愛着はないし、ひとまず「日本列島」とか「日本列島の住民」ということにしている。 僕だって伊勢生まれのまぎれもない日本人ではある…

知性はこの生に幻滅する・神道と天皇(43)

1 人はなぜ「神」をイメージするのか? 心はこの生の外に超出してゆくはたらきだから。そしてそこからこの生を見下ろしてこの生を支配しようとする欲望を持ってしまうから。 人は、この生の外の存在として「神」をイメージしてゆく 人を支配したがるのは、…

生きにくさを生きるということ、問うということ・神道と天皇(42)

1 生きものは、生きにくさを生きながら、この生とは何かと問い続けている。生きるいとなみは、問い続けることだ。もちろんこのことに自覚的であるのは人間だけかもしれないが、生きものが「そこに食いものがある」とか「そこに敵がいる」とかと気づくことだ…

「霊魂」と「たましい」は同じか?・神道と天皇(41)

1 神道で「人の道」というとき、それは世俗的宗教的な「道徳」というようなことではなく、「倫理」といったほうが正確かもしれない。人として「なすべきこと」というより、「せずにいられないこと」、べつに誰が決めたのでもなく、人間性の自然として、誰も…

すべては赦されている・神道と天皇(40)

1 天皇は、何もしない。しかしそれは、この世界のすべてを許している、ということでもある。 すべてを許している支配者など存在しない。すべてを許していたら支配なんかできない。集団の秩序と安定を守るのが支配者の仕事で、そのために民衆を裁く。 天皇は…

無力で無能であることの嘆きこそ美しい・神道と天皇(39)

1 神道は、「宗教」ではない。「人の道」でもない。われわれの心は、この世界に対してであれこの生に対してであれ、深く腑に落ちて納得することを渇望している。そういうのを「悟り」といったりするのだろうが、古代および古代以前の日本列島の住民は、それ…

水辺の馬は水を飲まない・神道と天皇(38)

1 神道の「かみ=かむ」という言葉には、政治や宗教に対する拒否反応が含まれている。それは、この生に執着することに対する拒否反応でもある。 人は、心の底の無意識の部分では、この生が取り返しのつかない過ちであることを嘆きながら、それでもこの世界…

拒否反応は大事だ・神道と天皇(37)

1 日本列島の住民は天皇に対する無垢な憧れがあり、両者のあいだに立った権力者は、その関係を利用していともたやすく民衆を支配してしまう。この国の権力支配の歴史は、最初からそのような構造の上に成り立っていたのであり、そうやって1500年以上天皇…

戦後社会が失ったもの・神道と天皇(36)

1 神道は、仏教伝来を契機にして生まれてきた。日本列島土着の宗教だったのでもなんでもない。それ以前の日本列島に、土着の宗教(=アニミズム)などというものは存在しなかった。 つまり、「神」をあらわす言葉は存在しなかった。 もしも土着の宗教があっ…

畏(かしこ)き姿・神道と天皇(35)

1 もともと神道は、人間が神になることによってはじまった。 人間を神にしてゆくのが神道なのだ。天皇を神にするのはよくないなどといっても、日本列島の「神(かみ)」なんて人間がなれる程度のものだから、それで全然かまわない。それはべつに、この世界…