2015-01-01から1年間の記事一覧

追いかける・ネアンデルタール人論85

1 人間性の本質・根源は、「労働」にあるのではない。 人が生きてあることは、お祭りの遊びだ。 もちろん現代社会においては働いて金を稼がなくては生きてゆけないが、働くことがそのまま人間性の本質であるともいえない。 共同体の制度いうか権力者は、民…

解き放たれる・ネアンデルタール人論84

1 原始時代の人類の歴史の動因は、生き延びようとする欲望にあったのではなく、生きてあることの鬱陶しさやいたたまれなさからの「解放=自由」を体験することにあった。おそらく現代においても、その体験こそが人を生かしている。人の思考や行動の基礎的普…

自由とは何か・ネアンデルタール人論83

1 このブログは今、人類史の「起源論」の基礎的なところを考え続けています。今どきの古人類学は、そこのところの問題設定において、ぜんぶ気に入らない。参考にできる問題設定など、何もない。だからもう、自分の頭で考えるしかない。既成の学説を引用して…

別れのかなしみ・ネアンデルタール人論82

1 ネアンデルタール人は、原始時代の人類拡散の歴史を背負って氷河期の北ヨーロッパに登場してきた。そこは人類拡散の行き止まりの地であり、もともと人類が生きられるはずのない苛酷な環境の地でもあった。住みよい理想の環境だったのではもちろんない。そ…

原始時代の集団性・ネアンデルタール人論81

1 今どきの多くの人類学フリークが信じているらしい、ネアンデルタール人が暮らしていた4〜3万年前のヨーロッパにクロマニヨン人=ホモ・サピエンスというアフリカ人が大挙してやってきた、などいう話はありえない。そんな陳腐で途方もない空想を歴史の真…

自尊感情という不自然・ネアンデルタール人論80

1 社会の底辺まで下りてゆけば、人間なんてどうしてこうも下品で鈍感なのだろうとうんざりさせられるし、そこでこそ宝石のような存在の輝きに出会うこともある。それはもう、この社会の最上層のところに昇っていってもきっとそうなのだろうし、その中間のマ…

関係が深まる・ネアンデルタール人論79

1 人は、生きてあるのはどういうことかと考えようとし、考えるまいともしながら生きている。とりあえずお金や幸せがあれば、考えなくてもすむ。 この場合の「考えない」というのは、「わからない」ということではなく、「すでにわかっているつもりになる」…

言葉の起源・ネアンデルタール人論78

1 本居宣長は、「嘆き(なげき)」という言葉の語源は長く息をしてため息をつくことの「長息(ながいき)」にある、と解説していて、小林秀雄も、その解釈でいいといっている。 ほんとにそれでいいのだろうか。本居宣長はこのようないかにも安易でこじつけ…

パンクな精神・ネアンデルタール人論77

1 ネアンデルタール人の世界に戦争はあったか?というか、原始人の世界に戦争はあったか? アフリカだろうとアジアだろうとヨーロッパだろうと、原始人の世界では、それぞれの地域環境によって身体形質の差異はあったにせよ、文化水準にそれほど大きな開き…

正義などどうでもいい・ネアンデルタール人論76

1 たとえば原発はダメだといっても、切実に原発を必要としている国もあるし、原発によって発見される科学の真実もあるわけで、原発について研究したいという科学者がいてもだれもとがめることはできない。だからそれは、普遍的な世界基準の正義にはなりえな…

漂泊・ネアンデルタール人論75

1 旅とは何か? そして旅の起源、人類はいつごろから旅をする猿になってきたのだろうか? 旅とはふだんの生活圏の外に出てゆく体験のことだとすれば、猿は旅をしない。だからチンパンジーなどは生息域がいつまでたっても拡散しないまま、現在では絶滅の危機…

生贄になる・ネアンデルタール人論74

1 ネアンデルタール人は、それぞれが氷河期の北ヨーロッパを生き残ってゆく能力を持っていたのではない。誰もが他者に生かされていたし、誰もが自分の命を捨ててでも他者を生かそうとしていた。 彼らに脂の乗った大型草食獣の肉はその極寒の環境を生き残っ…

生きられない・ネアンデルタール人論73

1 自分は生きてあることが許されていない存在だと思えるのに、他者から熱っぽく「生きていてくれ」と願われる(=ちやほやされる)なんて、なんだか戸惑ってしまう居心地の悪い事態です。そう願われる存在だから生き延びる権利と資格があると思うのではない…

他愛ないときめき・ネアンデルタール人論72

1 われわれはもう、無意識のうちに死者を弔いながら生きている。それが、世にいう「人間は死を意識する存在である」ということだ。 人の心は、死を意識しながらこの生からもこの世界からもはぐれてゆく。そしてその心もとなさや嘆きを共有しながらときめき…

ちやほやされたいか?・ネアンデルタール人論71

1 まあいまどきは、自分を見せびらかしたり衣食住のことに耽溺したりする幸せ自慢のブログのなんと多いことか。自分語りばかりしている。彼らは、自分語りをしていないと生きられない。そうやって人にちやほやされることを画策してばかりいる。 人にちやほ…

なんとかなるか?・ネアンデルタール人論70

1 原初の人類が二本の足で立ち上がることは、身体能力を大幅に後退させる体験だった。その姿勢はとても不安定で、胸・腹・性器等の急所を外にさらして攻撃されたらひとたまりもなかった。それは「生きられない」姿勢だった。なのに人類は自然界で生き残って…

人間性の自然のために・ネアンデルタール人論69

1 ろくな文明を持たない原始人であるネアンデルタール人が、どうして氷河期の北ヨーロッパという苛酷な環境の地に住み着いてゆくことができたのかということは、どう考えても不思議です。どんなに驚いても驚き過ぎるということはない。 彼らはそうやって5…

人類の集団性のパラドックス・ネアンデルタール人論・68

1 ネアンデルタール人の集団性について考えてみたい。 人類の集団性は、おそらく二本の足で立ち上がったときから猿とは違っていた。なにはともあれ二本の足で立ち上がることは、猿ではない存在になることだった。外見は猿そのものだったにせよ、その生態は…

歴史の過去と未来・ネアンデルタール人論67

1 この国の情況は、これから先どのようになってゆくのだろう。 もちろん、僕にはよくわからない。 ただ、多くの知識人や政治家が「こうなってゆかねばならない」とさかんに扇動しているが、彼らのいう通りの未来が待っているとは思えない。人類の歴史は、人…

狩りの起源・ネアンデルタール人論66

1 (承前) そろそろここらで狩りの起源についての考察の締めくくりをしようかと思うのだが、うまくまとまらない、今日の記事は長くなりそうです。 原始人は、狩りを覚えながら地球の隅々まで拡散していった。それは、「食糧戦略」という問題設定で考えるべ…

肉食の起源・ネアンデルタール人論65

1 (承前) おそらく狩りに使われたであろう先の尖った石器は、北ヨーロッパの50万年前の地層から発見されている。それに対して置換説の研究者たちが「もっとも知能が発達していた」と合唱しているアフリカでは、20〜30万年くらい前の地層からしか出…

命のやり取りをするということ・ネアンデルタール人論64

1 狩猟の起源、すなわち人類はいつごろから動物の体に突き刺すことができる先の尖った石器をつくることができるようになったかという問いの答えは諸説あって、50万年くらい前からだとも2,30万年前からだともいわれている。 もしも50万年前からだと…

「今ここ」に・ネアンデルタール人論63

1 集団的置換説の代表的な提唱者であるC・ストリンガーをはじめとする今どきの人類学者たちの多くは、どうして「ネアンデルタール人は同時代のアフリカのホモ・サピエンスに比べて知能が劣っていた」と決めつけるのだろう。えらそうなことをいっても彼らは…

原始人の首飾り・ネアンデルタール人論62

1 原始人の生、すなわち人類の普遍的な生のいとなみの基礎=自然は、「未来に対する計画性」すなわち「生き延びるため」のものではない。人は、誰もがどこかしらに「もう死んでもいい」という無意識の感慨を持っている。生きてあることはそれほどにいたたま…

物々交換の起源(3)・ネアンデルタール人論61

1 「貨幣」はもともと生き延びるための道具だったのではない。人間存在の普遍的な「もう死んでもいい」という無意識の感慨から生まれてきた。 原始時代に生き延びるための物々交換という行為などなかった。自分が生き延びることなど忘れて他者にときめき他…

物々交換の起源(2)・ネアンデルタール人論60

1 たとえば氷河期の北ヨーロッパのネアンデルタール人は、その極寒の環境にいたたまれない思いをさせられながら生きていた。寒さにほんろうされているみずからの身体、すなわち生きてあることを忘れていなければ生きられなかった。であれば意識は自然にみず…

物々交換の起源(1)・ネアンデルタール人論59

1 人類の脳容量はチンパンジーの3倍くらいある。しかしだからといって人類の脳はたらきの自然というか特徴は出力が豊かで頑丈だということにあるのではなく、「省エネ」のはたらきであんがい壊れやすくもある。はたらき過ぎるとかんたんに分裂病や自閉症な…

自滅の論理・ネアンデルタール人論58

1 ここでネアンデルタール人について考えることは、人類の文化の起源の契機について考えることであり、そこから人間性の普遍=自然を探りながら現代社会の問題を問い直してゆく試みでもあります。 現在の人類学の一般的な思考においては、ヨーロッパのネア…

文化の起源の契機・ネアンデルタール人論57

1 4〜3万年前の氷河期の北ヨーロッパにクロマニヨン人が出現したことによって人類の文化が本格的に花開いてきた、ともいわれている。 そのクロマニヨン人は、北ヨーロッパの先住民であるネアンデルタール人の末裔であるか、それともアフリカから移住して…

寒いね・ネアンデルタール人論56

1 ここでは、起源論に通じる根源の問題について考えようとしているわけで、言葉の起源と埋葬の起源が別の問題だとは考えていません。直立二足歩行の起源だって、そのパラダイムで問い直す必要がある。現在の人類学の世界で提出されている直立二足歩行の起源…