2015-01-01から1年間の記事一覧

死と和解する・ネアンデルタール人論55

1 猿にも「子供だけの社会」はあるでしょう。しかし、人間の世界ほどはっきりしたジェネレーションギャップがあるわけではない。まあ彼らはすぐに大人になってゆくし、子供だからといっても生きられる身体能力の最低限はそなえている。 人間の子供は大人に…

子供だけの社会・ネアンデルタール人論54

1 たとえば、子供の知性や感性の成長発達において、親が早くに死んでしまうことと親が長生きする場合とどちらがより有効かと考えたとき、少なくとも後者のほうが有効だともいえない。これだって、ネアンデルタール人論の問題です。 ネアンデルタール人の親…

まだ見捨てられていない・ネアンデルタール人論53

1 人は必ず死ぬ。われわれは、生きてあることが許されていない命を生きてしまっている。原始時代だろうと現在だろうと、人は、根源的にはそのことのいたたまれなさを共有している。まあ俗っぽい言い方をすれば、人と人の関係の豊かな味わいはそこにおいてこ…

起源論と進化論・ネアンデルタール人論52

1 人が必ず死ぬということは、「生きてあることが許されない存在」だということです。それなのにわれわれは、すでに生きてしまっている。すでに生きて、すでに目の前の世界にときめいてしまっている。 人は死ぬことを自覚している存在であるということは、…

進化論としての文化の起源・ネアンデルタール人論51

1 集団的置換説の学者たちは、氷河期の北ヨーロッパに住み着いていたネアンデルタール人の思考や行動はアフリカのホモ・サピエンスに比べて愚鈍だった、という。 そんなはずがないじゃないですか。何を幼稚なことをいっているのだろう。 人は、寒ければいろ…

生きにくさを生きる・ネアンデルタール人論50

1 氷河期の北の果てを生きたネアンデルタール人は、人類史上もっとも生きてあることが許されない環境を生きた人々だった。彼らその地が気に入ってそこで生きようとしたのではない。気がついたらそこで生きてしまっていた。だったらもう、そこで生きてゆくし…

人間的な飛躍の心模様・ネアンデルタール人論49

1 なにはともあれネアンデルタール人が氷河期の北ヨーロッパというこの上なく苛酷な地に住み着いていったのは、人間的な「飛躍」の心模様があったからであり、その「飛躍」の心模様こそが人類史の文化の進化発展の契機になっている。 そこは、彼らにとって…

世界はぼやけている・ネアンデルタール人論48

1 ネアンデルタール人は、50万年前から北ヨーロッパという氷河期の極北の地に住み着いていた。ろくな文明を持たない歴史段階の人類が、なぜそんな生きられるはずもない地に住み着くということができたのか。 原始人は、住みよい地を求めて地球の隅々まで…

凡庸な思考・ネアンデルタール人論47

1 たとえば最近、ある若者が近所の小学生を刃物でめった切りにして殺してしまうという事件が和歌山県で起きたが、おそらく彼の心は、この社会=世界に対する不安と恐怖でそうとうに追い詰められていたはずです。それほどに彼の意識はこの世界の隅々までくま…

無能であること・ネアンデルタール人論46

1 人類史上、火とのもっとも親密な関係を結んでいたのは、氷河期の北ヨーロッパを生きたネアンデルタール人でしょう。それは暖をとるためのものであると同時に狩りの獲物を焼くためのものでもあったし、さらには洞窟の中での語らいの場における大切な舞台装…

怠惰という自然・ネアンデルタール人論45

1 この世の中には生きのびる能力を豊かに持っている人がいて、そういう人に先導されて人類の歴史は動いてきたのか? そうじゃない。 この世の中に生きのびることができない人たちがいて、その人たちと一緒に生きてゆこうとしながら歴史が動いてきた。人の心…

今どきの若者はたよりないか・ネアンデルタール人論44

1 この世の中には生きのびる能力を豊かに持っている人がいて、そういう人に先導されて人類の歴史は動いてきたのか? そうじゃない。 この世の中に生きのびることができない人たちがいて、その人たちと一緒に生きてゆこうとしながら歴史が動いてきた。人の心…

知性や感性の源泉・ネアンデルタール人論・43

1 このシリーズでは、ネアンデルタール人を通して人間とは何かということを考えようとしています。あるいは、人間とは何かということを通してネアンデルタール人の本当の姿に迫りたいとも考えています。 いま考えている問題は「意識は一点に焦点を結んでゆ…

現代社会の閉塞感・ネアンデルタール人論42

1 「生きられないこの世のもっとも弱いもの」は、自然の摂理において生きてあることが許されていない存在であり、しかしそういう存在の仕方の尊厳というものがある。ネアンデルタール人は、そのことを最初に気づいた人類であったともいえる。そうやって彼ら…

介護の心・ネアンデルタール人論41

1 人類の「介護」という生態は、ネアンデルタール人のところから本格化してきた。そのような考古学的証拠がたくさんある。介護をされて生きていたに違いない人の骨がたくさん出土している。 それだけでももう、ネアンデルタール人について考える価値はじゅ…

「資本論」は正しいか?ネアンデルタール人論40

1 人は、「生きられないこの世のもっとも弱いもの」である老人や赤ん坊や病人や障害者の介護をして生きさせようとする。その人間的な生態は、ネアンデルタール人の時代から本格化してきた。 生きられないことの尊厳というものがある。 人は、悲劇的な生に魅…

鳥と人間・ネアンデルタール人論39

1 鳥と人間は似ている。 鳥は空を飛べるから、無力であっても比較的天敵に対する警戒心が薄い。だから、ときにあんなにも派手な色をしていても生き残ってくることができたのでしょう。 原初の人類の場合は、二本の足で立ち上がることによっていったん猿より…

介護の精紳と新自由主義・ネアンデルタール人論38

1 ネアンデルタール人がクロマニヨン人になっていっただけだ、と僕は考えています。 「集団的置換説」なんか、ほんとうにくだらない。 そのころ、ヨーロッパに移住していったアフリカ人などひとりもいない。サバンナの歴史に、そういうことをしたがるメンタ…

艱難辛苦の歴史・ネアンデルタール人論37

1 氷河期の北ヨーロッパに住み着いたネアンデルタール人の歴史は、艱難辛苦の歴史だった。それでも彼らは、その地を離れなかった。 いったいなぜか? 人類は本能的なレベルでそういう生態を持っているし、人間的な文化は、その艱難辛苦の歴史から劇的に発展…

暗喩の起源・ネアンデルタール人論36

1 自分を忘れて何かにときめき夢中になってゆく。そういう体験がなければ人は生きられない。人は、この生をたえず消去しながら生きている。「生命の尊厳」などといってもしょうがない。命のはたらきとは、命を消去することです。その新しく生まれ変わったよ…

知能の起源、あるいは基礎について・ネアンデルタール人論35

1 人類学で言葉の起源を説明するとき、知能が発達して「象徴思考」をするようになったからだといわれている。彼らはもう、人類史の文化の起源は何でもかんでも「象徴思考」という概念で説明しようとする。 つまり、りんごという言葉はりんごという意味を象…

自分の居場所・ネアンデルタール人論34

1 この世に自分の居場所などどこにもない、自分はこの世にいてはいけない存在なのではないだろうか……誰だってふとそう思うことはあるでしょう。たぶんそれが人の心の底にある人間性の自然で、生きていればいろんなことがあるし、生涯に一度もそんなふうに思…

何かの間違い・ネアンデルタール人論33

正月といっても、「今年もよろしく」と誰かにいえるような当てもなく、ますます孤立無援になってゆきそうな心地で書いています。まあ、そんな内容なのだから、しょうがない。 1 人類の知性や感性の基礎は、ネアンデルタール人によってつくられた。人が生き…