ドイツのマックス・ブランク進化人類学研究所というところの研究チームが、1年前に次のようなことを発表したらしい。
「3万年前のヨーロッパにおけるホモ・サピエンスクロマニヨン人の脳の神経回路は生後一年くらいから目覚ましく発達して、それが自然淘汰で生き残ることに寄与していた。一方ネアンデルタール人の脳はその発達が緩やかだったためにホモ・サピエンスよりも知能が遅れており、生き残る能力も劣っていた」、と。
そしてこれが、人類の歴史に新しい角度から光を与える研究だと注目されたんだってさ。
なに言ってるんだか。
50万年を極寒のその地で生きてきた人たちの「自然淘汰で生き残」ってきた能力を、おまえらなんだと思っているのか。いきなりやってきたアフリカ人がその能力をかんたんに凌駕できるなどということがあるはずないだろう。
この研究そのものにけちをつけるつもりはないが、この結論は、ほんとにくだらない。おまえらアホか、としか言いようがない。
おまえらの言う知能とやらは、そんなにもオールマイティなものなのか。
単純に頭骸骨のかたちから類推しただけのこの研究そのものが科学的に信憑性があるのかどうか疑わしいものだが、やつらは、何がなんでもネアンデルタールの知能が劣っていたということにしたいらしい。
知能なんか、ネアンデルタールホモ・サピエンスもたいして差はなかったのだ。現代人と3万年前の原始人だって同じようなものだ。これは、生物学の常識である。
では、百歩譲って、神経回路が発達したら、生き残る確率が高いのか。生き残るか否かは知能の発達具合で決定するのか。だったら、知能の低いアシカやオットセイは、人間よりも極寒の北の地で生き残る能力が劣っているのか。
知能が発達していたら自然淘汰を生き残ることができるだなんて、ほんとにくだらない。
もしもネアンデルタールのほうが知能が劣っていたのなら、なおのこと体力勝負でネアンデルタールの方に生き残る能力があったのだ。
原始人はまだ、知能=文明だけで氷河期の激烈な寒さを生き残る能力を持っていなかった。
クロマニヨンは、最終氷河期の激烈な寒さの中で、絶滅の危機に瀕しながらやっとの思いで生き残ったのだ。知能を駆使してらくらく潜り抜けたのではない。そういう困難な状況に耐えたことが、氷河期明けのヨーロッパの繁栄の歴史の土台になっているのであり、耐えることができたのは、ネアンデルタールの祖先以来その地に50万年生きてきたことの歴史と文化の蓄積によるのだ。
彼らが洞窟壁画などの文化を花開かせたのは、知能が発達していたからではなく、絶滅の危機をあえぎあえぎ生きているその嘆きの深さがあったからだ。その嘆きをなだめる機能として洞窟壁画が生まれてきたのだ。知能が進化したからではない、嘆きが深くなっていったからだ。
何が知能か。集団的置換説の研究者の考えることなんか、この程度だからいやになってしまう。
人間の芸術は、根源的には、人間として生きてあることの「嘆き」の上に成り立っているのだ。
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小賢しいませくれたガキが、そんなに素晴らしいのか。
身体が成長すれば、身体と環境との関係がどんどん変わっていって神経過敏だと耐えられなくなってしまう。身体が著しく成長する思春期の若者が情緒不安定になってしまうのはそのためだろう。
ホモ・サピエンスの赤ん坊の神経回路の方が早く発達するのは、それだけ身体の成長が緩やかだからだともいえる。あるいは、神経回路が早く発達することは、身体の成長を抑制するという機能になっているのかもしれない。いずれにせよ、そのようにしてホモ・サピエンスの「ネオテニー幼形成熟)」の体質が成り立っている。
病弱な子供は、不可避的に神経過敏になってしまうから、体があまり大きくならないことが多い。
氷河期の赤道直下は、気温が1年中20度前後で、とても暮らしやすい気候だったらしい。そういう環境で生まれた子供は、身体的なプレッシャーは受けないが、気温の1、2度の変化にも敏感になって、神経回路が発達する。つまり、純粋なホモ・サピエンスの子供にはヨーロッパの激烈な寒さに対する耐久力はなかった、ということだ。そういう子供が氷河期の北ヨーロッパに置かれたらどうなるか。おそらくそこで生き残ることのできる子供なんかひとりもいなかったはずだ。
そのころヨーロッパに上陸していったアフリカの純粋ホモ・サピエンスなどひとりもいない。じつは、ネアンデルタールの体にホモ・サピエンスの遺伝子がまぎれこんだだけで、それによってはじめてホモ・サピエンスの遺伝子のキャリアの個体がその極寒の地でなんとか生き残ることができたのだ。
北の地で赤ん坊が生き残るためには、一気に成長してゆかねばならない。少しでも早く成長して、少しでも早く体力を身につけなければならない。そのためには、逆に神経回路の発達は緩やかであった方がいい。
子供は、大人に比べれば、わりと暑さ寒さに平気である。それは、体力があるからではもちろんなく、神経回路がまだ未発達だからだろう。
ネアンデルタールの子供は、神経回路の発達をおさえながら一気に成長してゆく。これでなければ、極寒の地での自然淘汰に生き残れない。
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子供のあどけない表情は、誰だってかわいいと思うだろう。そのあどけなさは、神経回路が未発達であることからきている。ヨーロッパの子供はとくにあどけない表情をしているらしい。それでいて、体の発育は、われわれアジア人よりずっと早い。それは、彼らがネアンデルタールの子孫だからだろう。
脳の神経回路が早く発達すれば自然淘汰を生き残るだなんて、そういう安っぽい知能信仰で人類の進化を語ろうなんて、ほんとに愚劣だ。
集団的置換説の提唱者なんて、こんなアホばかりだ。
何度でも言う。3万年前にヨーロッパに旅立っていったアフリカの純粋ホモ・サピエンスなんかひとりもいない。
ようく考えてみるがいい。それで遺伝子のデータのつじつまが合う解釈の仕方はあるはずだ。
遺伝子は、集落から集落へと手渡されていったのであって、アフリカ人が旅していったのではない。
そのころ、ヨーロッパから中東および北アフリカまで、ネアンデルタールの形質をした人たちばかりが住んでいた。その人たちが北アフリカホモ・サピエンスの遺伝子を拾ってしまい、それが集落から集落へと手渡されながらヨーロッパ全土を覆っていっただけのこと。
ネアンデルタールの体にホモ・サピエンスの遺伝子がまぎれこんだだけだから氷河期の北ヨーロッパ自然淘汰を生き残ることができたのだ。同じネアンデルタールでも、ホモ・サピエンスの遺伝子を持っていればより長生きできるから、いつの間にかネアンデルタールホモ・サピエンスの遺伝子のキャリアばかりになってしまった。そのために彼らは、2万3千年前以降の最終氷河期に絶滅の危機を体験しなければならなかった。
その危機を代償にしてクロマニヨンの文化が花開いていったのだが、もしもその人々がアフリカの純粋ホモ・サピエンスならとっくに絶滅していたことだろう。
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そのころのヨーロッパに、純粋ホモ・サピエンスなどひとりもいなかったのだ。それは、現在のヨーロッパ人の遺伝子のデータとしてちゃんと残っているはずである。
置換説の研究者たちは、「そのときヨーロッパに移住していったアフリカのホモ・サピエンスネアンデルタールの総人口の10倍くらいだった」と言っているのだが、だったら現在のヨーロッパに純粋ホモ・サピエンスの白人がいるはずである。しかし、そんな白人はどこにもいない。みなネアンデルタールの遺伝子を残している。
実際そのころのアフリカは、まさにそういう割合だったから、現在でも純粋ホモ・サピエンスの黒人が多く残っている。現在、純粋ホモ・サピエンスがいるのは、近代になって奴隷として売られていった黒人の子孫をのぞけば、アフリカだけなのだ。
それはつまり、原始時代にアフリカを出ていった純粋ホモ・サピエンスなどひとりもいない、ということを意味する。
両者が混血したといっても、アフリカの純粋ホモ・サピエンスとヨーロッパのネアンデルタールがヨーロッパでセックスした、ということではない。ただ、ネアンデルタールがアフリカの出口でホモ・サピエンスの遺伝子を拾ってしまい(つまりそこで両者の交配が起こったというだけのこと)、それが集落から集落へと手渡されながらヨーロッパ中に広まってしまったのだ。
「2万年」とはそういう時間のことであって、アフリカの黒人がヨーロッパの白人に変わっていった時間のことではない。2万年だろうと10万年だろうと、その程度の時間で黒人が白人に変わることなどあり得ないのだ。
置換説の研究者の言うことなんか、どいつもこいつもほんとに横着で粗雑だ。
現在の白人は、黒人が白人に変わったのではない。数十万年前に、北ヨーロッパに住み着いてから体毛が抜けていったから白いのであり、つまり最初から白いのだ。アフリカのチンパンジーだって、毛をむしり取った下の肌は白いだろう。そのようなことだ。白人の祖先は、直立二足歩行の開始以来ずっと森の住民のままアフリカの外に拡散してきた人々であって、サバンナ暮らしを体験していない。サバンナの暮らしに適応できないものたちがアフリカの外へと拡散していったのだ。
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