人間が正常位でセックスをするようになったのはいつごろからだろうか。
たいていの人は、わりと新しいことだと思っている。
それは人間だけがすることだから、知能や文明が発達してからのことだと決めてかかっている。原始人は猿と同じ体位でやっていたと思っている人も少なくない。
しかし、現在の地球のアマゾン奥地で石器時代のような暮らしをしている民族だって、ちゃんと正常位でやっている。むしろ彼らは、ほとんど犬や猿みたいな体位はとらない。
彼らは、われわれ以上に正面から抱き合うことのよろこびを知っている。夫婦が毎晩そうやってじゃれあっている。われわれのような妙な自意識がないから、抱き合うということそれじたいのよろこびに浸ることができる。
内田樹氏の言うような、「他者の<承認>によって自己が生起する」などというようなややこしいことは考えない。そんな自意識は、現代人の病理なのだ。彼らは、そこに他者の身体があるということそれじたいにときめき、抱きついてゆく。おたがい「私は愛されているか=承認されているか」ということなど問わない。
大切なことは、「そこに他者の身体がある」ということ、それだけです。
愛のあるセックスだなんて、笑わせてくれる。そんな不純なものをからめないとセックスができないなんて、すごく下品で不潔なことなのです。人間は、愛を確認するためにセックスするのではない。生きてあることのどうしようもない居心地の悪さやいたたまれなさを抱えているからです。われわれはだれもが、直立二足歩行する生き物であることの居心地の悪さやいたたまれなさや不安を抱えている。
愛のあるセックスなんて、猿の世界の話です。猿の世界では、ボスの庇護と引き換えにボスに体を投げ出している。現代人も、楽しいデートとか、亭主の給料だとか、幸せな家庭だとか、自分が愛されているという満足とか、そういうことの約束手形としてセックスしているだけでしょう。純粋に相手の身体そのものにときめいていない。そんなの不潔です。猿のセックスです。
原始人はもっと純粋に「そこに他者の身体がある」ということそれじたいにときめいていた。われわれよりももっと清潔で純粋なセックスをしていた。「約束手形」じゃなく、相手の身体そのものにときめくことができるのが人間の人間たるゆえんです。
愛のあるセックスとか、他者の「承認」を確認しあうためにセックスするとか、そんなものは猿のしていることなのです。
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人類が正常位でセックスすることを覚えたのは、700万年前に直立二足歩行をはじめてあまり間もないころからのような気がする。
まず、正面から抱き合うことのよろこびを知った。
なぜそれがよろこびになるのか。
それは、直立二足歩行をはじめたことによって、体の正面に居心地の悪さや不安が発生したからです。
二本の足で立ち上がるということは、胸・腹・性器などの急所を外に晒してしまうことです。その居心地の悪さと不安を抱えながら立って歩きつづける生き物になったのです。歩くときはかならず立って歩いた。だから、足や腰の骨のかたちが猿とは決定的に違ってしまった。それが、700万年前だといわれています。
四本足で立って正面から向き合えば、「どけよ」ということになってしまう。オスとメスだって、それではセックスできないのだから、何の親しみもわいてこない。
しかし二本の足で立った人類は、つい抱き合ってしまうようになった。だってそうやって抱き合っていれば、おたがいがつっかえ棒になって姿勢が安定するからです。とくに最初のころは、骨格も完全な直立二足歩行向きではなかったのだから、現在のわれわれ以上に不安定です。しかも、たがいに急所を晒したまま攻撃されたらひとたまりもない姿勢です。攻撃すれば、し返される。攻撃されないためには、おたがいが、攻撃する意志のないことを示さなければならない。そのためにはもう、抱き合うしかない。抱き合っている限り、攻撃される心配がない。
そういうわけで、正面から向き合えばすぐ抱きついてゆく癖ができてしまっただろうと推測できる。たぶん、現在のわれわれ以上にすぐ抱き合ってしまっていたはずです。
それに、急所をさらす居心地の悪さや不安もわれわれ以上だったにちがいない。
そしてそうやって正面から抱き合う癖がついてしまえば、セックスもとうぜんその延長の体位でするようになったでしょう。
そのとき彼らは、樹上生活をやめて地上に下りてきていたのだから、猿や犬のような四足歩行の姿勢になることはまったくなくなっていたのです。立っているか座っているか寝転んでいるか、です。したがって、後ろからずぶり、というような機会ももうない。
彼らにとって、女がわざわざ四つんばいになるという姿勢は、とても不自然で、そういう発想すらしなかったのではないだろうか。あくまで正面からつながっていったのではないだろうか。
それに正面から抱き合っていれば、欲情がわいてくる。わいてきたところでそのままつながっていった。わざわざあらためて女が四つんばいになり、男が後ろにまわる、というのは、不自然でめんどくさいことです。現代人は、好きでそんなこともやっているが。
後背位は、猿の体位であると同時に極めて現代的な体位でもある。人間の本性的な体位は、正常位にある。
正面から抱き合っていると、接触面において相手の体ばかり感じて、みずからの体の正面の居心地の悪さが消え、だんだん欲情がわいてくる。ペニスが充血して硬くなってくる。ヴァギナが充血して濡れてくる。そういうことを発見して人類は、一年中発情している生き物になっていった。
だから、まず正常位から人類の歴史が始まっているのではないだろうか。
人間のセックスの体位は、正常位に始まって、正常位に尽きる。
原始人は犬や猿みたいな体位でセックスしていたなんて、ぜったい嘘だと思う。
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