長距離移動の能力について

陸上競技の走ることにかけてはもう、アフリカやアフリカ出身の黒人選手たちの独壇場です。
現在の走る競技の世界記録は、ほとんど黒人選手によってつくられている。
黒人以外の人種が何とか対等に戦えるのは、マラソンくらいのものです。
それも、オリンピックのように真夏の炎天下のレースで、走力だけでなく持久力とか精神力などの要素も加わってきたときだけです。真冬のレースなら、走力だけで一気に走り抜けられてしまう。
しかしアフリカ育ちの黒人が、どうしてヨーロッパ人やアジア人より真夏の気候に弱いのだろう。暑さは、彼らのほうが慣れているはずです。
それにまた、肌の色が濃いのは日陰と同じ体温が上がりにくいが、白い肌はすぐに影響を受けて脱水症状などを起こしやすい。
直射日光を受けて皮膚がんになりやすいのは、黒人よりも白人のほうです。それが、オーストラリアに移住した白人の悩みの種になっている。彼らの肌は、炎天下で活動するようにはできていない。
身体的にも、黒人のほうが暑さに強いはずなのです。
だったらもう、真夏のオリンピックで白人が対等に戦えるのは、白人のほうが根性があるからだ、と考えるしかない。
あるいは、黒人は根性なしだ、と。
いずれにせよ真夏の暑さは、アフリカの黒人にとっても、けっして楽なものではないらしい。つまり赤道直下で暮らしていれば、暑いときにはあちこち動きたくないし、動けば彼らだって疲労困憊してしまう。
アフリカのホモ・サピエンスは、すらりと背が高くて、長距離移動の能力があった。この能力によって、人類の地球拡散が実現した・・・これが置換説の主張です。イギリスのストリンガーも赤澤威先生もそういっている。おそらく置換説の誰もがそういうのでしょう。
アフリカのホモ・サピエンスは、炎天下のサバンナを勇ましく走り回っていたのでしょうか。
そんなはずはない。もしそうだったら、真夏のオリンピックだって、ぶっちぎりで勝ってしまう。
だいたい人間のような身体能力のない動物が、アフリカのサバンナでうろうろしていたら、たちまちライオンなどの肉食獣の餌食になってしまう。ライオンからすれば、シマウマの子供より、人間の大人のほうがずっと捕まえやすい。
とはいえ、サバンナでは逃げ足が速くないと生きてゆけないから、そういう個体が生き残ってそういう個体ばかりになってきたのかもしれない。
しかし何はともあれ、サバンナで安全に生きてゆくためには、身を潜めてじっとしているのがいちばんでしょう。
それに、そんな炎天下を動き回っていたら、黒人だって熱射病になって、へとへとになってしまう。
赤道直下のサバンナという環境で生きてきた彼らには、長い時間日光の下にいる習慣がないのです。だから、日光に当たって仕事をする根性がない。
それに対して年間の日照時間に乏しいヨーロッパの白人は、夏になれば、いつまでも陽の光を浴びていようとする。
すなわちアフリカのホモ・サピエンスには、長距離移動する能力も習性も根性もなかった、ということです。
狩だって、手近なところで済ませていたに決まっている(獲物を長時間長距離持ち歩いていたら、ライオンなどに横取りされてしまうだけだし、ついでに自分たちまで餌食になってしまう)。
すらりと背が高かったから長距離移動の能力があったなんて、考えることが安直過ぎる。
キリンとラクダを比べてみればわかるように、すらりと背が高い人とずんぐりした体形の人とどちらが長距離の行軍に耐えられるかといえば、けっして前者ではない。
足が長いということは、それだけ体重移動がスムーズにできないということです。ストライド走法とピッチ走法の違いですね。アフリカ選手は、ほとんどがストライド走法で、ピッチ走法がうまくできない。選手でさえそうなのだから、一般のアフリカ人はもっとそうでしょう。
したがって、研究者の言う、すらりと背が高かったから長距離移動の能力があったなんて、まったく幼稚で雑駁な理論にすぎないのです。
人間の直立二足歩行は、二本の足で体重を支えているのだから、疲れないはずがないのです。つまり、疲れてもなお歩ける丈夫な足とメンタリティとスムーズな体重移動こそが、長距離移動の能力なのです。直立二足歩行は、疲れない歩き方なのではなく、疲れてもなお歩ける歩き方なのです。
そういうことを考えれば、ホモ・サピエンスよりもずんぐりした体型のネアンデルタールのほうがずっと長距離異動の能力があったに決まっている。
アフリカのサバンナは、日差しが強く外敵も多い。そんなところで長時間長距離歩き続けることが、どんなに危険で困難なことか。
それに対して大型肉食獣の少ない北ヨーロッパは、長距離長時間の移動を可能にし、長く歩いていれば体も温まってくる。じっさい極寒の季節には、そうやって行き倒れになった草食獣の死体を探して歩き回っていた。またそこはもう冷蔵庫状態なのだから、アフリカと違って腐るということもない。ネアンデルタールは、そういうことができるだけの丈夫な足を持っていた。
長距離移動の能力は、北の地でこそ育つのです。       

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