閑話休題・内田先生は女にもてるのか

内田樹先生は、「女は何を欲望するか?」という著書の中で、「この世の中の男と女の<性秩序>は絶好調に機能している」といっておられる。
だから、内田先生のその本も含めて、女性論とかそういう類の本があいも変らず次々に生産されているのだとか。
そうじゃないでしょう先生、女とはどういう存在かとか、この世の中の男と女の関係はどうなっているのかとか、そういうことに対して誰もがわかりあぐね、離婚とか夫婦喧嘩とか恋人どうしの別離とか、そういう男と女の心の行き違いがいつまでたってもこの世にあふれかえって大いに混乱しているから、そういう類の本がひっきりなしに現われたり注目されたりしているのでしょう。
人類の「性秩序」は、直立二足歩行をはじめたときから人類滅亡のそのときまで「混乱」し続けてゆくしかないのですよ。混乱しているのが、人間の人間たる証しなのですよ。あなたは、そういう人間性の基礎を失って、制度的にしか男と女の関係を考えることができないから、そういう薄っぺらで乱暴なことがいえるのですよ。それが、大学で「文学」とやらを教えているもののいうせりふかよ。
自分だって女房に逃げられた経験を持っているくせに、よくもそんなあつかましいことがいえるものだ。
「絶好調に機能している」といえるほど先生は女のことがよくわかっている、ということだろうか。「絶好調に機能している」ほどに男と女は分かり合っている、ということでしょう、先生?
僕は、まあ経験不足のせいか、女ことも、男と女の関係のことも、ぜんぜんわからない。たぶん、ひといちばいわかっていない。だから、僕の中では、この世の「性秩序」は、まったく混乱しきっている。
内田先生は、最近若い奥さんをもらって新規開店し直されたから、その自信と確証がおありであるらしい。
しかしねえ、今年六十のあんなインポオヤジが若くてきれいな女をひとり占めしていいのかねえ。
いいんだろうけど、それはちょっと理不尽で、それこそこの世の性秩序が混乱していることの証拠なんじゃないの?いいとしこいたインポオヤジがさ、金と地位と人間性とやらを武器に、若くてきれいな女をかっさらっていいのかねえ。
あの二人、セックスやりまくっているんだろうか。男と女の「性秩序」というのなら、そういう関係もまた順調に豊かに機能していてしかるべきだろう。
内田先生のセックスアピールとはどんなところにあるのだろう。知っている人がいたら、教えていただきたいものだ。
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先生は、若いフリーターの男たちが結婚できないのは当然のことだ、とおっしゃる。相手に未来の暮らしを保証してやれない男は結婚してはいけないし、できないのがとうぜんなんだってさ。それが、この世の「性秩序」というものなんだってさ。
べつに、二人でフリーターをしながら一緒になったっていいだろう。この世には、そういう男女は、いくらでもいるだろう。そうして、毎晩狭いアパートの部屋でセックスしまくっているのなら、インポオヤジが若い女をたらしこむのよりはずっとすてきなことだと僕は思う。
人間社会は、「性秩序」が混乱しているから、男も女も一年中セックスしたくなってしまうのだ。
内田先生は、他者に対して「あなたなしでは生きられない」と祝福してゆくのが人間性の基礎で、そうするから他者からも祝福してもらえる、そういう「贈与=贈りもの」ができない人間は永久に他者からの祝福を得られないだろう、とおっしゃる。
つまり、他人から祝福してもらいたかったら、まず自分から祝福してゆけ、ということだ。
これは、一見もっともなようで、ものすごく下品な意見だ。品性の卑しさ丸出しじゃないか。他人から祝福してもらわないと生きて活けないんだってさ。先生にとって他人は、自分を祝福してくれるための存在で、その下心で他人を祝福してゆくんだってさ。先生、他人は、あなたが生きてゆくための道具か。あなたが生きてゆけようといけまいと、他人の知ったこっちゃないだろうが。あつかましいにもほどがある。
だいたい、酒場では、女を必要以上にほめたがる男とえらそうなことばかりいう男は、あまりもてない。なぜかといえば、自分をほめてもらいたい一心でそんなことをいっているのは、酒場の女からしたら先刻お見通しだからだ。男にしょっちゅう口説かれ、何度もそうした修羅場をくぐってきた女が、それくらいのこと、わからないはずないじゃないか。
一般社会でも、男と女の世界なら、おおむねそんなところだろう。
男と女の世界では、ほめりゃそのぶん返ってくるほど、甘くはない。自慢話をすればそのぶん尊敬してもらえるとはかぎらないし、そんなことがセックスアピールになるわけでもない。そんな「性秩序」など、まあ、あんまりもてたことがなくて、それでもそんなはずはないと躍起になっている男のはかない幻想なのだ。
一度も男に口説かれたことのないさびしい女が相手ならときにそういう作戦も通用するだろうが、世の中には、六十のジジイになってもまだそんなふうにして人をたらしこもうとばかりしているやつがいるんだよね。
何が「性秩序は絶好調に機能している」ものか。
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まあ「性秩序」のことであろうとなかろうと、、内田樹先生が何をいおうと勝手なのだろうが、その言説を追いかけまわしてうなずいている群衆がたくさんいるということは、めざわりだ。
おまえら、なんでそんなに簡単にしてやられるんだよ。おまえらも同じ穴のムジナで、そういうスケベ根性満々で生きているからだろう。
しかしこの世の中には、そういう社会的合意(制度性)に追いつめられている人たちもいる。また、そうやって扇動されて社会的合意(制度性)が形成されてしまうと、人々の思考もそれにしばられて限定されてしまい、なかなか新しい展開ができなくなってくる。それでいいのだろうか。この世が、あんなインポオヤジとその予備軍ばかりになってしまっていいのだろうか。
今、近代合理主義とやらが行き詰って、世界中の人々に不安と混乱がしのびよってきている、といわれている。もうそういうステレオタイプな「秩序」という「制度性」では人間を語れなくなってきている。
女をほめて自慢話をすればもてるような時代ではないのだ。そんなセンスでは、女も人間も語れないのだ。
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僕が、「ネアンデルタールは滅んだ」という言説なんかくだらないし真実でもない、というのは、ようするにそういうことだ。
この国では、人類学者たちによる「ネアンデルタールは滅んだ」という大合唱に扇動されて、それがほとんど社会的合意になりつつある。
その合意を先導をしているのが、赤澤威という先生だ。ひとまずこの先生が、この国のネアンデルタール学の権威になっている。
ちんけなことをいっているだけなんですけどね。
赤澤先生は、ネアンデルタールの「心」を解明するのだ、と張り切っておられる。「ネアンデルタールの正体(朝日選書)」という本を読んでみればいい、そう書いてある。
では先生のいう「心」とはどんなものかというと、「知能」のことなんだってさ。あほじゃなかろうか。
僕はひとまず、「心」とは「感慨」のことだと思っている。「知能」なんか関係ない。
そこが、僕と先生の差だ。僕のほうがはるかに深くネアンデルタールの「心」に迫っているはずだ。
文句がある人は、先生だろうと先生のお仲間だろうと、誰でもどうぞ。無限に反論して差し上げる。その代わり、僕がこれまで書いてきたものをちゃんと読んで、僕の論理を曲解して安く見積もるというようなとんちんかんなことをいってきてもらっては困りますよ。僕は、あなたたちのいうことがいかにくだらないかというところを、口をすっぱくしていってきたのだから。
この国の人類学者たちはことに、「知能」というパラダイムで原初の人類の歴史を語ろうとする傾向が強い。
人類の進化の歴史をつくってきたのは、「知能」ではない。人間らしい「世界に対する違和感」であり「嘆き」である、と僕は考えている。そしてそれこそが生き物が生きてあることの根源的なかたちであり、そのようにパラダイムをシフトしないと、いつまでたっても原初の人類の歴史には迫れないと思う。
人類の歴史だって、生物の生態系と同じように、「共存共栄」ではなく「共存共貧」のパラダイムで逆説的に進化してきたのだ。
この国の人類学者なんか、あほばっかりだと思う。
いや、大英博物館のストリンガーという世界的権威の座におさまっている教授だって、人間に対する思考の薄っぺらなどうしようもないあほだ。
おまえらのいう「ネアンデルタールは3万年前に滅んだ」という説と、僕の「3万年前にアフリカのサバンナを出ていったアフリカ人なんか一人もいない、ヨーロッパに乗り込んでいったホモ・サピエンスという人種群など存在しない、ただもうネアンデルタールホモ・サピエンスミトコンドリア遺伝子のキャリアに変っていっただけだ」という主張のどちらが20年後30年後の定説になっているか、首をかけたっていいんだぜ。少しずつ少しずつ、お前らの説があやしくなってきているんだぞ。
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わかりやすいタイトルだけど、いちおう現在の若者論であり、日本人論として書きました。
社会学的なデータを集めて分析した評論とかコラムというわけではありません。
自分なりの思考の軌跡をつづった、いわば感想文です。
よかったら。

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